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【モコモコ道】魔狼との戦闘(2)

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■ムスイの剣

村長の家から出ると、モコモコが駆け寄ってきた。

「ムスイ~! やめて~! 危ないよ~!
 一人で魔狼と戦うだなんて!
 私、絶対に離さないから!」

そう言って、モコモコは私にしがみついて来た。
そして、全力でスリスリしてきた。
どうやら外で話を聞いていたようで、私を行かせたくはないらしい。

なんかも~めんどくさかったので、肩に担いだ。

「離して~!(ジタバタ)」

私は自宅に向かいながら父さんに聞く。

「父さん、あの剣、できてるんだろ?」
「アレか~。かなり大きいが、使いこなせるのか?」
「ま~訓練してたし、問題ないよ」

特注で父さんに作ってもらっていた武器。
槍のように長い剣なので、魔狼相手でもなんとか戦えると思う。

私は父さんが作ってくれた「剣」を手にした。
初めて手にしたとは思えないくらいに手になじんでいる。
これなら何とかなりそうだ。
さすが父さん。鍛冶師としての腕は超一流だな。

私は自分の肩でうなだれ大人しくなっているモコモコを地面に下ろした。
そして、モコモコの頭をなでる。

「心配しなくても大丈夫。
 魔狼の肉を持ち帰ってあげるから、家で大人しく待ってな」
「・・・・・うん」

そして、私は魔狼が出現したという家畜小屋へと向かった。

■魔狼との戦闘

私は家畜小屋にやってきた。
なるほど、小屋の一部が破壊されている。魔狼の仕業か。
魔狼の足跡は・・・・・コレか。
結構デカいな。
なるほど、2.5mはあるのかもしれない。

魔狼は森の北側に戻っていったようだ。
私は魔狼の足跡をたどりつつ、森の中へと入っていった。

私にとって魔物との戦闘は初めてだ。
怖くないと言えばウソになる。
しかし、異世界に来た時からこういう事態は想定していた。
そのための訓練だってやってきた。
今の私なら絶対に勝てるはずだ。
私は気持ちを奮い立たせつつ、魔狼を探した。

・・・・・いた、魔狼だ。

私は茂みの中に隠れて様子をうかがう。
思ったより大きいな。いや、大きすぎるだろう。
2.5m? いや、3mくらいありそうな気がするのだが・・・・・。

「ウ~・・・・・」

魔狼も私に気づいたようだ。
威嚇しながら私の方に一歩一歩と近づいて来る。
距離は20m。

こいつに噛みつかれたら
一撃で骨を噛み砕かれそうだ・・・・・。

いかんいかん、消極的になるな。
冷静に、冷静にだ。
勝つための策は用意している。

私はクルリと反転し、後ろに走った。
魔狼は逃げたと思い勢いよく追ってくる。
私は一本の木の後ろに回り込み、
ズザザーっと滑り込みながら、体を反転。
剣を握り、身構え、力をためる。

木の後ろに回り込んだのは
魔狼が飛び掛かってくる方向を単調化させるのが狙いだ。
自然界の動物だから、動きが早い。
自由に動かれるとどのように向かってくるのかわからず
対応しきれないだろう。

このように木の後ろに移動すれば
障害物がある分、魔狼の攻撃方向を限定させることができる。
後はタイミングを合わせれば、
戦闘経験の無い素人の私でもなんとかなるはずだ。

魔狼は左から回り込み、飛び掛かってきた。

「グオオ~!!」

私はタイミングを合わせ魔狼を切りつける。

(シュン!)

一撃だった。
私の剣は、魔狼の体を大きく斬りさいた。
血しぶきがあがる。
魔狼はヨロヨロと2、3歩歩いたが、そのまま倒れ、動かなくなった。
何とか魔物との戦闘に勝利することができた。

「ふ~・・・・・上手くいって良かった」

初めての実戦。思った以上の出来だ。
これなら異世界でもやっていけそうだ。

しかし・・・・・私は強い違和感も覚えていた。

(前の世界と比べるとパワーがあり過ぎる。
 異世界だからと言ってしまえば、その通りではあるが・・・・・)

ここは異世界である以上、前の世界とは違う。
常識も色々と異なるだろう。
わかってはいる。
わかってはいるのだが・・・・・いまだに違いに戸惑うこともある。

まぁ、気にしすぎるのは良くないな。
気楽に考えよう。
私はそう自分に言い聞かせた。

とりあえず、肉を持って帰らないとな。
みんなも心配しているだろうし。

私は魔狼の足を紐でくくり、村の方へと引っ張っていった。

村に戻りながら、私はモコモコのことを思い出す。
やけに私のことを心配してくれていたな~、と。

~~~~~~~~~~

【回想】

「ムスイ、やめて~! 危ないよ~!
 私、絶対に離れないから!」
    (↑心配しているモコモコ)

「離して~!(ジタバタ)」
    (↑必死にもがいているモコモコ)

~~~~~~~~~~

「プッ・・・・・ククク・・・・・」

思い出すと、笑いがこみあげてくる。
幼女のおもりはめんどくさいが
私の周りでちょこまか動き回るモコモコは
それなりに面白い存在でもある。

ま~心配してくれているのはよくわかる。
もしかしたら強引に出て行ったから怒っているかもしれないな。

「明日は一日、一緒に遊んであげるか~」

そんなことを考えながら、私は村へと帰っていった。

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