■牢屋にやってきたモコモコ
私は牢屋に入れられてしまった。
それにしても、貧弱な牢屋だな~。
ま~、使う機会がない平和な村だったからな~。
とりあえず私は夜になるのを待った。
夜になり、土の壁を掌底で破壊し脱獄した。
私としては今すぐにでもモコモコの家に向かいたいところではあるが
モコモコは私と会ってくれるとは思えない。
誤解されているし・・・・・。一体どうすれば・・・・・。
そう悩んでいたところ、誰かがこっちに向かっ歩いてくる。
私は建物の陰に隠れ、様子をうかがう。
やってきたのは・・・・・ショールを羽織ったモコモコだった。
牢屋の扉の前まで来ると、ソワソワしながら中の様子をうかがっている。
どうやら私のことが心配になって様子を見に来てくれたようだ。
(ううう・・・! なんて、なんて優しい奴なんだ、お前は!)
感動のあまり、涙がちょちょぎれる。
そして、思わずコツンと石を蹴飛ばしてしまった。
「だ、誰!?」
隠れていた私は、モコモコの前に現れた。
モコモコの優しさが嬉しくて嬉しくて、涙が止まらない。
「モコモコ・・・・・、私だよ・・・・・、私だよ・・・・・
ありがとう・・・・・、ありがとう~・・・・・!!!」
そう言いながら、私はモコモコに向かって突進した。
涙も拭かず、顔をぐしゃぐしゃにして。
「ヒ・・・・・ヒ~!! 助けて~~~!!」
モコモコは全速力で走って逃げた。
「待って、待ってくれ~!!!
誤解だ、誤解なんだ~!!!」
私は全速力でモコモコを追いかけた。
当然、私の方が余裕で速い。
私はモコモコを捕まえると、後ろから抱きしめ、顔にスリスリしてしまった。
「うぎゃ~~~!! 助けて~~~!!」
しかし、私にはモコモコの断末魔は聞こえていなかった。
「モコモコ! モコモコ! やっと、やっと再会できたね!!」
そういって、顔にスリスリし続ける。
モコモコの断末魔を聞いて村人たちが集まってきた。
「なにをやってる!」
「こいつ、牢屋から脱走しやがったのか!」
「モコちゃんから離れろ!」
「このストーカー野郎め!」
・・・・・え? ストーカー? 私が?
何やらとんでもない誤解を受けている。
「うえ~ん! おじいちゃん! おばあちゃん!」
「お~よしよし、怖かったね」
「もう大丈夫だよ」
そういっておじいさんとおばあさんはモコモコを抱きしめる。
「い、いや、まってください。誤解です。碁会所なんですよ!」
「なにがゴカイショだ! わけわからんこと言ってないで、立て!」
こうして、私はまた牢屋に入れられた。
今度は脱走できないように鉄の鎖につながれてしまった。
■モコモコの絶縁宣言
次の日の朝。一晩寝て、さすがに私も冷静になった。
色々と対応がまずかったと反省せざるをえない。
もう少し自然に、もう少しスマートに対応すべきだった。
モコモコを怖がらせてしまったし、
村の人たちにストーカーだと勘違いさせてしまった。
なんとかしなければ・・・・・。
私は必死になって打開策を考える。
お昼、牢屋にモコモコがやってきた。
村長とおじいさん、おばあさんも一緒だ。
が、そんなことは私にとってはどうでもよかった。
「おお~! モコモコ!!」
私はとにかくうれしかった。
モコモコが自ら私の元に来てくれたのが。
しかし・・・・・、様子がおかしい。
モコモコが泣いている。真剣な面持ちだった。
喜んでいる場合ではないというオーラがバンバンと伝わってくる。
私は息をのむ。
「お、お願いです・・・・・。
もう私に付きまとわないで下さい・・・・・」
「・・・・・え? い、いや・・・・・、
私は君を愛していて・・・・・その・・・・・
なんというか・・・・・・・・」
予想を超えた事態に、私も何を言えばいいのかわからなくなってしまった。
「私に好意を持っていただけるのはとてもうれしいんです。
で、でも・・・・・、怖いんです。とても怖いんです!
お願いです! もう私に近寄らないで下さい!
抱き着いてこないでください!!
お願いします!! お願いします!!」
そういってモコモコは地面に崩れ落ちた。
マジ泣きであった。壮絶な訴えであった。魂の叫びであった。
私はこんなにもモコモコを苦しめてしまっていたのか・・・・・。
私は放心状態となり、返事をすることもできなかった。
モコモコが帰った後、私は生ける屍となっていた。
3日間、食事をすることもできなくなり、
牢屋の隅で膝を抱えたままうつむいていた。
モコモコも心配して、毎日牢屋に駆けつけてくれていた。
私に何かを言っているようだった。
しかし・・・・・、私の耳にはもう何も届いていなかった。
このままここで死ぬんだろうなと思っていた。
しかし、ここで死んだらモコモコが責任を感じてしまう。
私は鉄の鎖を引きちぎり、壁を破壊して
ヨロヨロと夜の森の中へ入っていった。
森の奥へいき、誰にも発見されない場所をみつけると、
そこで横になった。
そして、そこから動くことは無く、私は2度目の生涯を終えた。
享年15歳であった。
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