第17話目次第19話

ギルドからムスイ宛てに手紙が来た。

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【ギルドの手紙】
▲▲地点に魔族出現の報告がありました。この危険な任務をこなせるのはムスイさんのパーティーしかありません。どうか、調査と討伐の依頼を受けていただけないでしょうか。
ギルドに来る必要はありません。直接▲▲地点に赴き、調査をお願いいたします。その後、結果報告をお願いいたします。報酬は◆◆です。
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魔族の侵攻は極めて厄介だ。大規模な侵攻の前触れかもしれない。他人事ではすまない。私とシュート、サクヤの3人は調査へと向かうことになった。

「気を付けて行ってきてね」

モコモコも魔族という話しを聞いてかなり心配している。

「心配しなくても大丈夫。戦うのではなく、あくまで調査だから。適当に追い払って任務終了だし、危なそうなら近づかないから」

そういってモコモコに抱き着きスリスリする。

「それじゃぁ、行ってくる」
「いってらっしゃい」

私たちは目的地の▲▲地点へと向かった。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

「魔族ってみたことあるか? 強いのかな?」
「肉体的には人間よりも弱そうに見えるって聞いたことあるな。ただ、魔法をガンガン撃ってくるらしい。サクヤタイプの」
「さすが魔族。サクヤみたいなのがたくさんいるのか~・・・・・」
「なんか言い方引っかかる」
「情報も少ないし、やはり無理して戦わない方が良さそうだな」
「俺もそれでよいと思う」
「それじゃあ、偵察メインで、襲って来ない限り戦わないという方向で行こう」
「うん、そうしようそうしよう」

方針が決まった。

「しかし、割に合わんな~。ギルド曰く、危険なことだから一番強いパーティーで、ということみたいだが、それだとこれから全て危険なことはこっちに回ってくるってことになる。たまらんな。報酬も低く見積もられてるぞ。」
「ははは、確かに。でも、頼りにされるってのは悪くない。良い修行にもなるしな。」

その時・・・・・、前方の空から黒い影が私たちの上空に被さり、夜が訪れたかと思うと、夜はムスイたちを通り越し、後方に落ちた。

(ズダダダ~~ン!!!!!)

「なっ!!!!!」
「い、今のは・・・・・」
「なになに? 今の何?」

今まで見たことが無い事態が起こった。今の黒いものはアンス村の近くに落ちている。ヤバイ、ヤバイ、よくわからないが、かなりヤバいことが起こったことはハッキリとわかる。

「あれは・・・・・、黒の雷だ!」
「え? あれが?」
「俺も初めて見たが、おそらく間違いない。確か落ちた場所に魔族が大量発生しているはず。村が危険だ! あ、ムスイ!」

私は走った。全力で走った。私の脚なら村まで1時間とかからない。

村からかなり近い場所に落ちている。あの辺りにはアンス村しかない。魔族が狙っているとしたらアンス村だ。クソッ、私がいない時にこんなことが起こるだなんて。

冷静に、冷静に考えろ。村のみんなは年寄が多いと言っても体はかなり丈夫だ。戦闘の訓練もしている。武器も用意している。防壁もできているし、戦う準備はできている。簡単にはやられない。私が戻るまでの時間稼ぎができていればそれで十分だ。私なら一人でもやれる。モコモコを、村のみんなを守ることができる。大丈夫だ。何とかなる。

私はそう自分に言い聞かせ、全力で走った。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

村の近くまでやってきた。

グッ・・・・・魔族の瘴気に覆われている。やってきた魔族の数が多いということだ。皆は大丈夫か!?

村が見えた。皆は・・・・・戦っている! 防衛のためにつくった壁に隠れながら弓を射っている。魔族も警戒してすぐには近づかない。何とか持ちこたえている。

「村長! ダイゴロウさん!」
「おお、ムスイ、戻ってきてくれたか!」

私は用意されている「矢」を魔族に向かって射る。じいさんたちとは制度も威力も違う。私の矢はことごとく魔族に当たった。魔族は焦り、後退する。

戦っているのは、村長を含め5人。よく持ちこたえてくれたものだ。

「他の人たちは?」
「碁会所にいる」
「すぐに戻るから、むやみに攻撃せず、魔族が近づいてきたらでいい」
「わかった」

私は碁会所の方へと向かう。

「みんな、無事か?」
「おお、ムスイくん!」

おばあさんたちはみんないる。・・・・・が、モコモコがいない。嫌な汗が流れる。

「・・・・・モ、モコモコは?」
「そ、それが・・・・・ムスイくんを見送った後に、薬草を取りに行くと言って森の中へ・・・・・」
「・・・・・・・」

薬草が生えているのは魔族たちが集結している当たり。最悪の事態だ。

私は村の地図を出す。

「村を放棄しなければいけないかもしれない。その場合は、以前練習したときのように”北のC地点”から逃げて。こっち方面には魔族がいない。いたらD地点の方から。逃げるタイミングは村長たちの判断に任せるので従って。」
「ムスイくんは?」
「私はモコモコを助けに行く」
「・・・・・・・・・・」

みんな、無理だと思った。あの規模の魔族からモコモコを助け出せるはずがない。もしかしたらもう死んでいるかもしれない。

しかし・・・・・、モコモコのおばあさんはガタガタと震えながら、ムスイの前にやってきて、すがるように言った。

「モコを・・・・・お願いします・・・・・」

いつも以上に小さく、小さくなり、ムスイの足元にしがみつくように、泣き崩れた。

「大丈夫です。必ずモコモコを連れて帰ります。ですから、逃げる準備はしっかり行っておいてください。みんなも武器を持って、最小限の荷物で。」

私はそう言うと、前戦にいる村長たちの元へ。

「村長、状況は?」
「今は大人しいが、そのうち総攻撃を仕掛けてくるだろう。そうなると持ちこたえられん。逃げるタイミングを考えた方が良さそうじゃ。」
「今から私が魔族の方に強行突破する。みんなは援護射撃をしてくれ」
「何を言う! 死ぬ気か?」
「森の中にモコモコがいる。救出に向かう。」
「・・・・・・・グッ」

モコモコのおじいさんが驚いた顔でコチラをみる。知らなかったようだ。

「はぁはぁはぁはぁ・・・ひぃひぃ・・・・ぐ、ぐぐぅ・・・・・」

呼吸が荒くなり過呼吸になっている。ガタガタと震え、涙を流し、激しく動揺している。

「碁会所のみんなは逃げる準備ができている。北東からはシュートとサクヤが戻ってきている。合流してくれ。魔族たちも深追いはしないはずだ。援護射撃が終わったら、全員撤退。いいな?」
「・・・・・わかった」

みんな動揺していた。特にモコモコのおじいさんは酷く、戦える状況では無い。逃げることができるかどうかも怪しい。このままでは駄目だ・・・・・。

私は皆を鼓舞する。

「私は戦いで負けたことなど一度もない!! 必ず、モコモコを助けて戻ってくる!! だから、皆は私を信じてくれ~!!」

そういうムスイを見て、モコモコのおじいさんは呼吸を整える。眼に生気が戻る。もう大丈夫だ。

全員、援護射撃の準備を始める。

「ムスイ」
「はい」
「・・・・・頼む」
「・・・・・はい」

準備は整った。

「私は魔族に気づかれないよう森の近くまで近づきます。魔族が気づいて戦いがはじまったら援護射撃を。飛んできた弓は絶対に私には当たりません。安心して弓を射ってください。」
「わかった」
「では、行ってきます」

ムスイは岩に隠れながら森の方へと近づいていく。森の近くにいる魔族はまだ気づいていない。

弓の射程圏内に入った。ムスイは隠れて魔族に弓を射る。当たった! 魔族は突然の襲撃に慌てだす。村人たちの援護射撃も始まった。魔族たちは大混乱だ。

ムスイは次々に魔族を斬り付ける。目的は時間稼ぎ。完全に倒す必要はない。私はモコモコがいるであろう森の奥へと走った。後ろから魔族たちも追ってくる。応戦している暇などない。とにかく森の奥へと進まなければ。

目の前に魔族が立ちはだかる。こいつは・・・・・強い! だが、止まる暇などない、突っ切る!! 私は一直線にその魔族の方へと突き進み・・・・・・・

(ガキン!)

ムスイの一撃はガードされた。そして・・・・・、ムスイの左腕は空高く吹き飛ばされた。

ムスイは走り続ける。突破できたのだから十分だ。私はさらに奥へ奥へと突き進む。

「!!!!!!!」

右から魔族が襲い掛かってきた。私は剣でガードしたが、強烈な一撃を受け20mほど吹き飛ばされる。しかし、そんなことはどうでもいい! 私は吹き飛ばされた勢いを前進する勢いに変え、前へ前へと走り続ける。モコモコは必ずこっちにいるはずだ!!!

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