◆死んで転生したようだ
眼が覚めると、目の前に2人の人物がいた。
「ムスイ~、お父さんだよ~」
「お母さんよ~」
目の前で楽しそうに会話している2人。いきなりどういう状況だと、私は考えを巡らせる。
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そうだ。私は先ほどまでインターネットを使って囲碁をやっていたんだ。最近絶不調で3段から2段に落ち、さらに負け続けてしまって初段まで落ちてしまった。イライラが頂点に達し、ついついノートパソコンの画面をぶん殴ってしまった。
ビリビリビリビリビリ~~~!!!
「ぐぎぎぎぎぎ!!!!!」
ものすごい電流が体中を駆け巡ったような気がする。う~む・・・・・、やっちまったのかもしれない。
◆ここは異世界
母親に抱っこされて、外を散歩する。不思議と私が生きてきた世界と似たいるような気もするが、どうやらこの世界には「魔族」や「魔物」がいるらしい。そして「剣士」や「魔法使い」もいるらしい。なるほど、輪廻転生したのではなく、異世界転生したと見るべきか。
ま~死んだのなら仕方がない。新たな人生を拾えて儲けものだ。この世界でノンビリ過ごすことにしよう。それにしても・・・・・私は前の人生はどのように生きてきたのだろうか? 記憶が曖昧でよくわからない。いや、過去の記憶だけではない。何かおかしい。何か違和感を感じる。それが一体何なのか、今の私にはわからなかった。
◆貧しい村だった
生活していて気付く。ここはとても貧しい村みたいだ。食べ物も貧祖で、みんな痩せている。
原因は幾つかあるだろうが、一番の問題は「水」だ。畑に水をやる必要があるが、遠くにある川に行ってバケツに水をいれ、水を持って帰って水巻をしている。そしてなくなったらまた川へ・・・・・を繰り返している。とてつもない重労働だ。水やりだけで毎日こんなことをやっていては体がもたない。
そして、この村の住人は若者がほとんどおらず、老人ばかりだ。労働力が無い。完全に積んでいるではないか。ここは滅びゆく村ではなかろうか。まさかこんな村で生まれてしまうとは。うちの両親は一体何を考えてこの村に住居を構えたのやら。
ざっと見た感じ、村の住人は10数人。家が数件、畑があって、家畜がいて・・・・・といったところか。家畜は「豚」と「ニワトリ」だった。私がいた世界とさほど変わらないな。
◆隣に住む同い年の女の子
隣の家には私と同い年の娘さんがいる。「女11」という名前だ。おじいさんとおばあさんに育てられており、両親はいない。
「女11」は物静かで人見知りが激しい子供だった。この村には私と女11くらいしか子供がいない。お隣同士で年も同じということもあり、女11はよく私のもとへやってきていた。そして私の服をつかんで後ろをついてきていた。
◆ムスイ7歳、この村を開拓する
せっかくノンビリとした異世界生活を送る予定だったのに、こんなに貧乏では話にならない。私は村の開拓を決意する。
まず、村長に企画書を提出。村長の協力を経て、村人総出で村の開拓を行うことになった。
①「水まき用の推し車」を作成。そこに水を入れ、畑まで押していき、ヒシャクで水を撒いていくというやり方だ。これでだいぶ負担が小さくなる。
②森に「池」をつくって、そこから村へ川を作っていく。川が畑の近くにあれば、さらに水やりが楽になる。
③森の中で果物を発見。種をまいて、果物がたくさんとれるようにする。
④森の中が豊かになることで「動物」が増えてくる。家畜も増やせる。
こうして収穫量も増え、村はどんどん豊かになっていきました。
◆女11と18歳で結婚するも・・・・・
始めは後ろからついてくるだけの女11だったが、色々なことを覚え、常に先頭に立ってムスイに協力してくれた。ムスイにとって女11はかけがえのない大事な存在になっていた。
そして18歳となり、私は女11と結婚することになった。村の人たちもみな祝福してくれた。
このまま女11と幸せな人生を送っていこう。そう思っていたのだが・・・・・・・、ムスイは急に病気になってしまった。原因不明の重病だ。
最初は「横になっていればすぐに治る」と思っていたが、次第にベットから出れなくなった。そして、起き上がることもできなくなり、とうとう食事をすることもできなくなってしまった。
意識朦朧で苦しむ私。ベットの横では女11が涙を流し私の手を握っている。私の人生はこんなところで終わってしまうのか。これからだというのに。女11をまだ幸せにできていないのに。それが悔しくて悔しくて・・・・・・。私は涙を流しながらこの世を去った・・・・・・・。享年18歳であった。
◆ムスイ、新たに生まれかわる
そして、フと目を覚ますと・・・・・、目の前には両親の顔があった。
「ムスイ、お父さんだよ~」
「お母さんよ~」
う~ん・・・・・、どこかで見たことがある光景だ。というか、生まれた時じゃん。どうなってんの!?
女11と過ごした日々は夢だったのか? いや、そんなはずはない。見渡してみると。カレンダーがある。XX389年のカレンダー。私が生まれた年だ。体が赤ん坊になっている。一体どうなっているのか?
「もしかして・・・・・時間をさかのぼったのか?」
まるでリセットボタンを押されたかのような不思議な状況だ。なぜこのようなことになってしまったのか。
いや、この際そんなことはどうでもいい。大事なのは私の妻である女11だ。私を心配し涙を流しながらずっと手を握ってくれていた女11の顔が頭をよぎる。赤ん坊の肉体がもどかしい。早く、早く「女11」に会いたい。
私は生後一週間で立ち上がると、隣の「女11」の元へと走った・・・・・が、外へ飛び出て驚いた。私の知っている景色とは違う。ここは・・・・・「地11村」ではない!? 別の村だ。一体どうして・・・・・!???
0歳1週間の私は、その場に立ち尽くすことしかできなかった・・・・・。
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