第15話目次第17話

夕方、碁会所でみんなで囲碁を打ちながらくつろいでいると、町に行っていたシュートとサクヤが帰ってきた。

「おつかれ~、町はどんな感じだった?」
「あまり良くないな。魔物の数が増えている。ここから遠いので村は心配ないと思うが。」
「そうか・・・・・」

遠いならひとまず安心だ。

「ギルドはムスイにも来てほしいと言っているぞ」
「ん? でも、現状でどうにかなっているんだろ?」
「そうだが、魔物の規模が今までで一番多くなっているんだ。ギルド側も不安なんだろうな」
「そうか・・・・・」

ムスイは考える。

「じゃあ、次シュート達が町に行くときに同行するよ。いついくんだ?」
「今は落ち着いているし、一週間後かな」
「わかった。準備しておく」

大丈夫だとは思うが、とりあえず顔は出さないとな。

「なんだかあわただしくなってきたの~」
「弓の訓練も続けているし、防壁もムスイたちがつくってくれたからな~」
「戦う準備はしとかなきゃいかんの~」

そう言いながら囲碁を打つ。そんなに真剣には考えていない。

ま~、実際のところそこまで心配はない。ここは危険な地域からだいぶ離れているからな。

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午前中、ムスイは碁会所の縁側で、棋譜並べを行っている。明日はギルドに行かなければいけない日だし、今日は仕事はせずにノンビリ囲碁に専念する予定だ。

そこへ、サクヤがやってきた。ムスイの背後から近寄って、背中にしがみつく。そして、肩越しにホッペをスリスリし始めた。

「えぇい、なれなれしい、どこでそんなことを覚えてきた? お父さんはお前をそんな子供に育てた覚えはないぞ」
「お父さんから教わった~」
「お父さんから? お父さんはそんなことを教えた記憶は・・・・・」

(モコモコの料理の邪魔をしつつ後ろからスリスリする私)
(モコモコの裁縫の邪魔をしつつ後ろからスリスリする私)
(モコモコの掃除の邪魔をしつつ後ろからスリスリする私)

色々あった。

「そんなことはみんな忘れてしまいなさい」
「ムリ~」

無理だった。

「で? いったい何の用だ? お小遣いか?」
「最近分かったんだけど~、モコモコちゃんって~弓がとっても上手いんだよ~。どお? 知らなかったでしょ? 知らなかったでしょ?」
「・・・・・いや、知ってたけど。」
「ええ? 知ってたの?」
「モコモコ案件で私が知らないことなどあるわけないだろ。・・・・・で、それがどしたの?」
「いや、だから~、モコモコさんをパーティーに入れましょうって言ってるのよ。ウチのパーティーはまだ3人だし、ムスイが前に行けば、前衛2人、後衛2人でバランスがとれるでしょ。ムスイだって好きな人と一緒にいられるんだから最高じゃない!(フフフとからかい顔) ねぇねぇ、そうしましょうよ~!」

そういうサクヤを、ムスイはジロリと睨み、そして溜息を吐く。

「はぁ~・・・、サクヤは何もわかっていないんだな~」
「んん? どういうこと?」
「モコモコはねぇ、女なんだよ?」
「ええ、もちろんよ。そんなの当たり前じゃない。」
「わかってて言ってるのか?」
「ええ~~~? 何が言いたいのよ~?」

ムスイは心底呆れてしまった。

「はぁ~・・・・・、サクヤは人としての常識というものを分かっていないようだな。いいか? よく覚えておきなさい。
女を戦場に連れていく男など、この世にいない!!」(ドド~ン!)

サクヤは考えたことも無いようなことを言われ、頭が真っ白になって固まってしまった。・・・・・が、現実に戻ってくる。

「え、えぇぇぇ~~~!! いや、だって、だって、私、私、女、お・・・・・あ・・・・・」

サクヤは自分の胸をパンパンと叩いたが、主張できるものではなかった。

「私、私、だって、だって、女、女・・・・・!!!

サクヤは動揺しながらも、髪をつかんでぶんぶん振り回し全力で女をアピールした。女を主張できるパーツが髪しかないという悲しい現実に涙しながら。

しかし、ムスイは聞いていない。

「まったく・・・・・、こんな当たり前のことを言わせるだなんて、父ちゃん情けなくって涙でてくらぁ~! お前、もしかしてチン●ンついてないんじゃないのか?」
「ついてないよ! 生まれた時からついてないよ! ホラホラ! 見てみろ! こんちくしょ~!」

そう言って、テリャー! ドリャー! とスカートをめくりまくるサクヤ。しかし、ムスイは見ていない。

そして、やれやれ、と言わんばかりに呆れ果ててその場を後にする。

「おら~! どこいくんだ~! 見てみろ~、どりゃ~!!」

暴走するサクヤの声だけが悲しく響き渡る・・・・・。

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次の日、ムスイ、シュート、サクヤの3人はギルドへと向かう。もちろん、モコモコがついていくことは無い。

「モコモコ、戦いは男の役目だ。安心して待っていてくれ」
「腹立つわ~」(ポロ涙)

こうして、3人はギルドへと向かって行った。

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ムスイたち3人はギルドにやってきた。

「受付さん、お久しぶりです」
「ムスイ君、久しぶりね。ほんと、ギルドに来ないんだから」
「いや~、村でノンビリ囲碁を打つのが私の生きがいでして」

それにしても、ギルド内の人の数が少ないような気がする。

「今、色々と大変なのよ。ここいらで2ヶ所の村が魔族に占領されたって話し、聞いているでしょ?」
「ええ、ですがあの2つの村は場所が悪かったですからね。ある意味、仕方がないかなとは思いましたよ」
「そうではあるんだけど、だけど、魔族の動きが活発なのは間違いないわ。ギルドも報奨金を出して魔物退治や調査を行っているの。ムスイ君のパーティーが一番強いんだから、頑張ってほしいのよ」

思ったよりも事態は深刻そうだな。

「わかりました。では、大変そうな案件を幾つか受けますよ」

こうして、ムスイたち3人はギルドの依頼を複数受けることになった。

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