◆冒険者ギルドがある地31街

ムスイは冒険者になるため一番近くにある街にやってきた。

やはり、村と比べると建物が立派だな~。人も多くにぎやかだ。武器屋や防具屋もあるのだろうか? 冒険者になるなら覗いてみたいところではあるが、このあたりは魔物もいないし、凶暴な動物もいない。しばらくはこのボロイ剣と弓で大丈夫だろう。

とりあえず、一直線で冒険者ギルドに向かうことにした。

◆冒険者ギルドで登録

ここが冒険者ギルドか~。ムスイは中へと入っていった。

中に入ると、他の冒険者たちがチラチラとこちらを見ている。見かけない冒険者の品定めをしているかのようだ。田舎育ちの私にとって、こんなに人が集まっている場所は居心地が悪い。さっさと受付の方へ行く。

「あの~・・・・・」
「冒険者ギルドは初めての方ですか? 登録ならこちらの紙に必定事項を記入してください。文字は書けますか?」
「大丈夫です、これに記入すればいいんですね。」

私は紙を受け取り必要事項を記入した。

・名前:ムスイ
・年齢:15歳
・出身地:地11村
・職業:弓
・パーティー:無し

「これでいいですか?」
「待ってくださいね・・・・・、はい問題ありません。これで登録終了です」

なるほどなるほど。・・・・・で、これからどうすればいいんだろうか?

「これから私はどうすればいいんですか?」
「そうですね。あそこの掲示板に依頼が貼られてありますので、自分で出来そうなものを選び、受付の方に持ってきて依頼がはじまります。依頼を達成後、受付に報告し依頼終了、報奨金が支払われるというシステムですね。」

なるほどなるほど。

「でも、ムスイさんはお一人のようですし、ここで仲間集めをしてからの方がいいと思いますよ。一人で冒険するのは危険ですから。」

仲間集めか。考えてもみなかった。

「わかりました。そうします。ありがとうございます。」
「いえいえ。」

そう微笑む受付さん。

「でも、ムスイさんってちょっと変わっていますね。」
「え? 何がですか?」

思いがけないことを言われて驚く私。

「ん~、なんというか、ムスイさんって私のことを男として見ているような雰囲気なんですよ。今までそんな風に診られたことが無くて、正直驚いちゃった。」
「そ、そうですか? いや~、そんなことは無いと思うんですけどね~、はっはっはっは。」

・・・・・鋭い人だ。そして、この人は女なのか。

そう、実のところ私は「性別の判断ができない」というタイプなのだ。相手が男なのか女なのかまったくわからない。普通の人は見ただけで相手が男か女なのかわかるようだが、私はまったくわからないのだ。

言うなれば、私には周りの人間が「柴犬」のように見えている。柴犬の顔を見てもオスなのかメスなのか判断できない。判断する方法は「チン●ン」を確認するしかない。しかし、人間は服を着ている、これでは「チン●ン」を確認できない。どうやって性別を判断しろというのか。顔だけで性別を判断できるなど、私から見れば神業である。

「まぁいいわ。とにかく冒険者として頑張ってね。」
「はい、ありがとうございます! では!」

なんとか逃げ切れた心境だ。さてさて、仲間を集めなければ・・・・・。

◆男剣士と女魔法使い(魔法の手)

壁にもたれながら、周囲の人々をうかがう。強くて役に立ちそうな者もいるが、性格に難がありそうな奴らばかりだ。できれば強くて、私の言うことを何でも聞いて、しっかりと働いてくれる奴でなければ困る。そういう適任者はいないものか。

・・・・・次の瞬間、外から異様な気配を感じた。今までまったく感じたことが無い気配だ。何かヤバいものがこちらに向かってきている。なんだ!? 一体何者だ!? 私は高鳴る鼓動を抑えつつ入り口に注目した。

そこから入ってきたのは「若い冒険者」が2人。異様な気配を発していたのは「後ろからついてきている奴」だ。なんだあの無数に伸びてきている触角の様な、手の様な物体は!? さすがにヤバすぎて震え上がってしまった。

だが、なんとなくわかる。あいつは「魔法使い」だ。私の直感が「あいつは魔法使いだ」と言っている。この世界に魔法使いがいるという話しはきいたことがあるが、魔法使いってみんなああなのか? よくわからないが、要チェックせざるをえない。

それにしても、あれだけ無数の手を生やして異常な状態であるにもかかわらず、周りの反応が特にない。あれはもしかしたら「魔力がある者にしか見えない」ということなのかもしれない。

う~ん・・・・・、あまり気にしたことは無いが、おそらく私には魔力があるということなのだろう。

◆女魔法使いの特徴

この魔法使いをよくよく観察してみると奇妙なことに気が付く。

①身長をカサマシしている

こいつの身長は・・・・・135cmと言ったところか。それをローブで隠れているのをいいことに、魔法でカサマシしている。厚底ブーツといったところか。25cmほどカサマシして身長160cmといったところか。とんでもない奴だな。

②胸を大きく見せている

しかも・・・・・胸が大きく見えるように膨らましている・・・・・。何がしたいんだ、こいつは・・・・・。私には意味が全く分からなかった。

◆女魔法使い、周囲をチェックする

魔法使いは掲示物を見るふりをしながら、無数の魔法の手を使って、冒険者たちを触りだした。・・・・・正確には、「股間」と「胸」を触りだした。

オイオイオイオイ・・・・・一体何をやり始めているんだ!?

ん?・・・・・「股間」を・・・・・触る・・・・・そうか! 性別を確認しているんだ! 確かにあそこをチェックしなければ男か女かわからない。全裸にしなければ性別確認できないところだが、触ればわかるということだな。さすがに倫理的にどうかと思うが、あいつは魔法を使ってバレないようにやっている。上手いやり方だ。天才だな。ムスイは感心した。

そして・・・・・「胸」か。そういえば、女11は胸が膨らんでいたな。なるほど、胸で確認する方法もあるということか。股間は触らないと確認できないが、胸のサイズなら服の上からでも確認できる。そうやって性別を確認する方法もあったのか。この魔法使いはなかなか勉強になる。ムスイは感心した。

私は受付さんの胸を見る。なるほど、自分で女だと主張するだけのことはある。大きい。女だな。

ムスイは他の冒険者もチェック。みんな胸が小さい。うむ、男だな。
あのマッチョでガタイのいい奴は胸が大きい。女だな。(ピンポン:違います)
しかし、胸丸出しで外を出歩くとは。まったく、都会の女はハレンチでけしからん。

あの小柄な剣士は、男だな。
無数の手を生やしている魔法使いは・・・・・、女のフリをした男だな。(ピンポーン:違います)それにしても、どうして女のふりをしたいのだろうか。意味が分からん。

というか、あの魔法使い、股間を触り過ぎだろう。
触り方も熱心過ぎるだろう。丁寧すぎるだろう。
おい!(股間ズーム小)
おい!(ズーム中)
おい!(ズーム大)
バレて無いと思ってやりたい放題だな。
しかも無表情で!(顔ズーム大)

む、今度は受付の女を触るのか。今度は熱心に胸を触っている。触り過ぎだろう。
ん? 自分の胸を気にしている?(絶壁) 無表情が崩れた?
怒っている?(顔ズーム小)
怒っている!?(顔ズーム中)
怒っている!!(顔ズーム大)
一体どうした!?
まったく、都会の男が考えることはよくわからん。

「ど、どうした魔法使い? お前ってギルドに入ると時々不機嫌になるよな?」
「・・・・・別に。」(ほっぺを膨らまし不機嫌顔)

とりあえず、性別の確認方法はわかった。魔法使いの無数の手はうざいから極力意識しないようにしよう。

◆剣士と魔法使いを仲間にする

見た目は小さいし、あの2人なら私の部下にはもってこいだな。私は2人に声をかけた。

「やぁ、君たち。私の仲間になってくれないか?」
「ん? 仲間?」
「そう、私がリーダーで、君たち2人は私の部下だ。」

ザワザワザワ・・・・・。他の冒険者たちがざわめき始める。

「ちょ、ちょっとムスイ君。その2人は小柄だけどこのギルドでは一番強い冒険者なのよ?」

焦る受付さん。しかい、ムスイは余裕だ。

「大丈夫、私の方が強いから。」(ドド~ン)
「・・・大した自信じゃねぇか。なら勝負するか?」
「ああ、いいだろう。」

女魔法使いの見えない手による濃厚なチェックが入る。

(やめろ、いい加減にしろ、マジでやめろ、タプタプすんな)

ムスイは腕を組み、顔を上に向け、全力で女魔法使いのチェックを耐えきった。

「では、行くぞ!!」
(ドカ!バキ!ボス!ボカ!)(ジャイ●ンがの●太を殴る風)

勝負はムスイの圧勝だった。ボコボコにされ地面にひれふす剣士。口を両手で押さえて驚く魔法使い。誰かさんのせいで手加減しそこなっちまったぜ。

「つ・・・強い・・・・・。まさかこれほどとは・・・。」
「す、すまん。ちょっとやり過ぎた。」

マジで申し訳ないと思った。

「いや、いいさ。お前の方が強いというのはよくわかった。俺としても強い仲間は大歓迎だ。魔法使いもそれでいいだろう?」
「うん。」
「それじゃあ、これからよろしくな。」

あれだけボコボコにしたのに素直に許してくれるとは。なかなか心の広い剣士のようだ。剣士はムスイに手を差し出す。

「ああ、よろしく。」

ムスイは剣士と握手をし、魔法使いとも握手した。これからこの2人が私の部下だ。部下ができたことで、やれることも増えるだろう。

さぁ、今から冒険の始まりだ! 次の目的地は、もちろん「地11村」になるのだった。