3度目の異世界人生を送ることになったムスイ。
とは言っても、モコモコからは決定的に嫌われてしまっている。泣きながら拒絶されてしまっており、関係が改善さえる見通しは全くなかった。もはや絶望的な状況だ。どうやっても結婚できるとは思えない。
・・・・・いやいやいや、よく考えてみるとそうではない。赤ん坊に戻ったのだから、前回の失敗は全てリセットされているはずだ。それならば、モコモコにストーカーしてしまって嫌われてしまった事実はもう存在しないということになる。モコモコと1からやり直せるということではないか! 結婚できる可能性は十分あるではないか!
リセット万歳! ループ万歳! 女神様ありがとう!!
私はこころから女神さまに感謝した。
よし、やるべきことは決まった。まずはここがどこなのか、状況を確認しなければいけないな。どうせ、また知らない村なのだろう。
「父さん、ここはどこの村なんだい?」
三度目の生ともなると、生まれてすぐに喋ることだって可能だった。
「・・・・・お・・・・・うぉ・・・・・こ、ここはメイデン村だけど・・・・・・」
父親は動揺している。母親もガタガタと震えている。しかし、そんなことよりも早く情報が欲しい。
「地図を見せて。現在地を知りたいんだ」
「わ・・・・・、わかった」
父さんは素直に応じてくれた。
メイデン村は・・・・・ココか。アンス村とは500kmも離れているな、チクショー! また遠くなりやがった! リセットはいいとしても、なんでいちいち生まれる村が変わるねんて。
私も3度目の生ということもあり、赤ん坊であってもかなりの身体能力がある。頑張れば短期間でモコモコの元に向かうことができるはずだ。よし、体を鍛えるぞ!
「ありがとう、父さん」
そういって、私はベットから降りた。そして、テーブルの上に置かれている私用の服を着る。さらに、首にタオルを巻いた。
「それじゃ~、いってくる」
「ど、どこへ?」
「もちろん、ロードワークだよ」
「・・・・・いってらっしゃい」
両親は抱き合い、怯えながら、私を送り出してくれた。
私は走った。モコモコと三度目の再会を果たし、再び結婚するために! 強靭な肉体を手に入れ、1日でも早くモコモコと再会を果たす! 魔物対策として剣や弓の稽古もバッチリだ!
それはそうと、この村には美少女がたくさんいるようだ。アイドルグループが幾つもつくられ、近隣の村や町からは追っかけがやってきている。そういえば、女神様が何か言ってたな~。知らんけど。
それでいて、なぜか私はモテモテだった。アイドルたちから毎日追っかけられ、ベタベタされた。一体どうなってんねん。
この村では修行も仕事もできない。私は5歳で逃げるようにこの村を離れた。そして、別の村に移り、剣と弓の修行を行いながら、肉体労働でお金を稼いだ。
そして、7年の月日が流れ、ムスイは12歳になった。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
お金もたまった。魔物や猛獣が現れても大丈夫だろう。たぶん。私はアンス村へと向かった。約500kmの長い旅だったが。体を鍛えてきたムスイには楽勝で、約10日でアンス村へとたどり着いた。
私はアンス村の中に入り、モコモコを探す。
モコモコは一体どこに・・・・・、いた! やっぱりこの花畑にいたか! 私は木の陰に隠れて覗き見る。やっぱり私のモコモコは素晴らしいな~、も~・・・・・。
いやいや、いかんいかん、落ち着け落ち着け。前回は興奮のあまりモコモコを恐怖のどん底に落としてしまった。同じ過ちを繰り返してはいけない。今回は冷静に冷静に対応するんだ。そうすれば、間違いなく私とモコモコは結婚できるはずだ。
私は隠れながら木を一本、一本と移動した。そして最もモコモコに近い木にたどりついた。モコモコまで後10mと言ったところか。私は顔を半分だし、コッソリとモコモコを見つめる。
そして・・・・・、おぉ! モコモコが私の存在に気づいてくれたぞ!
「!!!!!!!!!!」(驚愕)
・・・・・予想外の反応だった。モコモコの顔は「驚き」と「恐怖」の表情へと変わっていった。
(・・・・・え? 何その反応? なんでそんなに驚いたの? なんで怖がってるの? 初対面ですよね? 私、そんなに怖い顔してる?)
ムスイは意味が分からない。
モコモコはガクガクと震えながらゆっくりと立ち上がった。そして、ゆっくり、ゆっくりと後ろに下がり始めた。まるでクマにでも遭遇したかのような対応だ。
(そ、そうか! 顔半分で覗いているから不審に思っているんだ! これではやっぱり怪しすぎるよな~、うん。正々堂々と体を全部出せば安心してくれるはずだ!)
私は隠れるのを止め、モコモコに全身を披露した。
(ババ~ン!)
「や、やあ、こんにち・・・・・」
「!!!!!!!!!!」(絶望)
モコモコの恐怖はさらに悪化したように見受けられる。口を大きく開け、半べそ状態となり、身をそらして恐怖している。
「ヒィ、ヒィ、ヒィ・・・・・おじいちゃん・・・・・おばあちゃん・・・・・」
怯え切っている。呼吸が荒い。生命の危機を感じている。それが痛いほど伝わってくる。そんなモコモコをみて、私はまったく動けなくなってしまった。
泣きながら、「ヒィヒィ」言いながら、後ろに下がり続けるモコモコ。その場でクルっと反転すると、ガクガク震えながらも必死になって家に走り始めた。そのスピードがあまりにも遅く、あまりにも可哀そうで、私は後を追うことができなかった。
「もう・・・・・駄目なのか・・・・・」
私はその場に立ち尽くし、逃げて行ったモコモコの方向をジッと見つめながら、涙を流した。
一体どうなっているのか? あの時のストーカー行為はリセットされているのではないのか? 記憶は消えていないということなのか?
私は全ての可能性が立たれてしまったかのような絶望感にさいなまれた。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
野宿をしながら、次の日も、その次の日も遠くからモコモコの家を見守った。一週間たってもモコモコは家から出てこなかった。さすがに、認めざるを得ない。
「モコモコと結婚するのはもう無理なのか・・・・・。すまなかった、モコモコ。もう二度と会いに来ないよ・・・・・。」
そう口ずさんだ私は、この村から出ていくことを決意した。そして、決して振り返ること無く、アンス村から立ち去るのであった・・・・・。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
が、すぐにムスイは戻ってきた。「村の開拓」をするのを忘れていたからだ。この村は貧しい。開拓しておかないとモコモコが食べ物に困ってしまう。これは必ずやっておかなければいけない必須事項だ。
決して私利私欲で戻ってきたわけでは無い。本当だ。
昼間に行動すると見つかってしまう。私は夜に活動することにした。
・「水まき用の推し車」
・「動物」を捕まえて村に提供
・「果物」も取ってきて提供、種を村の近くに植える
・「池」を作る
・「川」の水が村の近くにやってくるようにする
やっていて気付く。完全ではないが、以前やっていた開拓の一部がなされている。やはり、時間が遡ったとしても、何らかの理由でやったことの一部が残るという仕様なのだろう。
・・・・・だが、モコモコの記憶は完全消去にしていてもらいたかった。
毎夜、開拓を進めるムスイ。明け方近くになるとモコモコの部屋の窓にやってくるのが日課となっていた。窓ガラスから中を覗く。モコモコが寝ている。私のモコモコがグッスリ寝むっている。毎日1時間、モコモコが寝ているのを覗きに来ることだけが私の生きがいになっていた。
(3年後)
そして、森の開拓が終わった。一人でやったので3年かかった。やり切ったという心境だ。大変だったとは思わない。むしろ、充実した3年間だった。
いや・・・・・、とうとう終わってしまったという心境だった・・・・・。これでモコモコがいる村から離れなければいけなくなってしまう・・・・・。
ムスイは15歳になっていた。
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開拓が終わってしまったことで、いよいよ、モコモコとの別れの時がやってきた、ということになる・・・・・。今日が別れの日だ・・・・・。
ムスイは明け方、いつものようにモコモコの部屋の窓へとやってきた。窓ガラス越しに中を覗く。
モコモコがベットで寝ている。グッスリと眠っている。私のモコモコがそこにいるのに、もうこれでお別れだというのか!? なんということだ!? そんな悲しいことがあっていいのか!?
私は、絶望した。
「今日でお別れ、お別れだから!!」
そう言って、ムスイは窓の鍵を余裕で破壊し、窓を開け、部屋の中へと侵入した。そして・・・・・、モコモコの枕元へ・・・・・。
(ああ、モコモコこれでお別れだなんて!! 永遠にお別れだなんて!! なんて、なんて悲しすぎるんだ!! グググ・・・・・)
ムスイは天を仰ぎ涙を流す。
「これが最後、これが最後だから!」
そういうと勢いそのままに、モコモコをガバッと抱きしめ、ほっぺにスリスリした。
(ああ、もう会えなくなるだなんて、モコモコと会えなくなるだなんて!!)
涙を流しながらほっぺをスリスリし続けるムスイだったが・・・・・
「ぅ・・・・・う~ん・・・・・・・・・・・」
ヤ、ヤバイ、起きそうだ。ムスイは「どうしようどうしよう」とアタフタしつつ、窓の外に飛び出し、全速力で村の外へと走っていった。
「・・・・・ハッ!!」
モコモコはとてつもない悪夢にうなされていたかのようにベットから飛び起きた。今、部屋の中に誰かがいたような・・・・・? 経験したことも無い恐怖心から冷や汗が止まらない。周囲を見渡す。誰もいない。良かった・・・・・夢か・・・・・。
モコモコは安心して一息つく・・・・・が・・・・・・・
窓「ヒュ~・・・・・」(←窓が全開でカーテンが風でなびいている)
モコモコは凍り付く。確かに閉めたはずだ。そもそも昨日は開けていないはずだ。自然にあくはずがない。勝手に開いたことなど一度もない。なぜ全開になっているのか・・・・・。誰かが・・・・・部屋の中に・・・・・いた・・・・・???
「ん・・・・・んん~~~~・・・・・!!!???」
モコモコは恐怖を通り越して、泣けばいいのか、笑えばいいのかわからない表情となった。そして・・・・・・・
「キャーーーーー!!!」
遠くを走って逃げるムスイの元まで聞こえてくるような断末魔が村中に鳴り響いた。
「ごめん! ごめん! 本当にごめん! もう二度とこの村には来ないから!! 君の目の前には現れないから!!」
ムスイはそう熱く熱く誓い、村から走り去っていった。
だが、たぶんすぐに戻ってくるだろう!!!
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生きる理由を失ったムスイは途方に暮れた。最後の最後まで「モコモコと仲良くなれるのでは」という希望を持ち続けてきたが、その線はもうない。新しい未来を考えなければいけない段階だ。
「はぁ・・・・・」
ムスイは深いため息とともに、モコモコとの未来を断ち切って、今後のこと考えた。
まずは現実を見つめ、この世界について考えてみようと思う。
・剣と魔法の異世界ファンタジーの世界
・魔物がいる、魔族がいる、魔王がいる
「う~ん・・・・・そういえば、町に冒険者ギルドがあると聞いたことがあるな。行く当てもないし、しばらくは冒険者としてノンビリ過ごすか・・・・・」
ムスイは近くにある町へと向かうことにした。
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⇒ 第03話 ツイッター(X)
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あとがき 25/01/05
みなさんこんにちは、原作者のムスイです。ちょこちょこと「あとがき」を書いてはいますが、毎回記入しているわけではありませんので、その点、よろしくどうぞ。
この作品は、漫画の「GOD SAVE THEすげこまくん!」と「ハーメルンのバイオリン弾き」をベースイメージして考えた作品です。どちらも私のお気に入りの漫画となります。2話目でヒロインのモコモコを追いかけまわしてしまうという悲しい出来事が起こってしまいましたが、この2作品の影響によるものです。私の責任ではありません(尊敬する漫画家の責任にする私)
◆永野のりこ(GOD SAVE THEすげこまくん!)
【ブログ】さいはての石の下のアレ
◆渡辺道明(ハーメルンのバイオリン弾き)
【ブログ】道明ブログ
モコモコのキャライメージは、両作品のヒロインを足して2で割ったイメージとなっております。