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■モコモコの眠れない夜
「そろそろお開きにしようか
部屋を用意しているから、今日はそこで眠てくれ。」
そう言って、魔王さんは立ち上がり、通路へと出ていく。
私たちはそんな魔王さんの後ろからついていった。
「シュートはこの部屋を、モコモコとサクヤはこっちを使ってくれ。
明日の朝、国に送り届けてあげるから。
それじゃあ」
そう言って、魔王さんはどこかへ行ってしまった。
私たち3人はいまだに思いもしなかった状況に戸惑っている。
まさか魔王さんがこんなに色々と面倒を見てくれるだなんて。
私たち3人は無言のまま顔を見合わせる。
「とりあえず、寝るか」
「そうだね。私も今日は疲れた」
そういってサクヤちゃんは私に抱き着いて来る。
「それじゃあ、シュートくん、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。
サクヤ、モコモコさんも疲れてるんだからあまり面倒かけるなよ」
「うん~・・・・・」
そう言って、私たちはそれぞれの部屋に入っていった。
部屋の中は、大きなベッドが1つあった。
二人でこのベッドを使いなさいと言うことだろう。
サクヤちゃんはベッドに倒れ込む。
「うわ~・・・・・こんなに柔らかいベッド初めて・・・・・」
私も触ってみる。
本当にやわらかい。
それに、とてもきれいだ。
魔王さんは私たちの為に用意してくれていたんだ。
でも、どうして私たちが来るとわかっていたんだろう?
「ス~・・・・・ス~・・・・・」
サクヤちゃんはもう眠ってしまっている。
私はサクヤちゃんを抱き上げて、ベッドの中央に移動させ、布団をかける。
私はベッドから降り、窓の方に移動する。
外は月明かりで夜とは思えないほど明るかった。
魔王城は小高い丘の上にあるため景色もいい。
私はしばらく窓辺で外を眺めていた。
(私は明日、どうなっちゃうんだろう・・・・・)
私は魔王さんと取引をし、自分の全てを差し出した。
あの時はそれでいいと思ったけど、今になって怖くなってきた。
サクヤちゃんもシュートくんも、3人で国に戻れると思っている。
だけど、そうでないことを私だけは知っている。
(皆と一緒にいられるのは今日が最後なんだ)
そんなことを考えると、悲しくて涙があふれてきた。