【前回のあらすじ】

一回目の生で「女11」と結婚したムスイは、二回目の生でも女11と結婚をと考えていた。しかし、第一印象が悪すぎて拒絶されてしまう。女11を諦め消えないムスイは、いささか強引なやり方をとってしまう。その結果、取り返しがつかないほどに嫌われてしまった。ショックのあまり、そのまま死を選んでしまったムスイ。

三度目の生では一体どうする?

◆ムスイ、3度目の生

「ムスイ、お父さんだよ~」
「お母さんよ~」

ああ、またここに戻ってきたのか。そうだよな。死んでもリセットされるからな~。・・・・・リセットされる?

そうだ! 前回の生での失敗もリセットされたんだ。だから、今回の生でうまくやればいいんだ。そうすれば、女11と仲良くなれる。必ず結婚できる! 間違いない! 私はそう確信した。

よし、まずはここがどこなのか、状況を確認しなければ。

「父さん、ここはどこの村なんだい?」

三度目の生ともなると、生まれてすぐに喋ることだって可能だ。

「・・・・・お・・・・・うぉ・・・・・こ、ここは地31村だけど・・・・・・。」

父親は動揺している。母親もガタガタと震えている。しかし、そんなことよりも早く情報が欲しい。

「地図を見せて。現在地を知りたいんだ。」
「わ・・・・・、わかった。」

父さんは素直に応じてくれた。

地31村は・・・・・ココか。地11村とは500kmも離れているな、チクショー! また遠くなりやがった。でも、3度目ともなると赤ん坊でもかなりの能力を発揮することができる。頑張ればすぐに女11と会えるはずだ。

「ありがとう、父さん」

そういって、私はベットから降りた。そして、テーブルの上に置かれている私用の服を着る。さらに、首にタオルを巻いた。

「それじゃー、いってくる。」
「ど、どこへ?」
「もちろん、ロードワークだよ。」
「・・・・・いってらっしゃい」

両親は抱き合い、怯えながら、私を送り出してくれた。

私は走った。女11と再会を果たすためならなんだってやってやる。とにかく、ひたすらに体を鍛えた。魔物対策の剣術の稽古もバッチリさ!

◆ムスイ12歳、女11に会いに行く

今回は500kmとかなりの長距離になったが、今の私ならチョチョイノチョイやで。私は一週間かけて地11村へとたどり着いた。

地11村についたのは夕方前の4時ごろ。女11はどこに・・・・・、いた! やっぱりこの花畑にいたか! やっぱり私の女11は可愛い・・・・・最高だ・・・・・。

いやいや、いかん、落ち着け落ち着け。前回は興奮のあまり女11を恐怖のどん底に落としてしまった。同じ過ちなど犯さない。今回は冷静に冷静に対応するんだ。

私は隠れながら木を一本一本移動した。そして最も女11に近い木にたどりついた。女11まで後10と言ったところか。私は顔を半分だしコッソリと見つめている。

おぉ! 女11が私の存在に気づいてくれたぞ!

「!!!!!!!!!!」

予想外の反応だった。女11の顔は驚きと恐怖の表情へと変わった。

・・・・・え? 何その反応? なんでそんなに驚いたの? 初対面ですよね? ムスイは意味が分からない。

女11はガクガクと震えながらゆっくりと立ち上がった。そして、ゆっくり、ゆっくりと後ろに下がり始めた。まるでクマにでも遭遇したかのような対応だ。

そ、そうか! 顔半分で覗いているから不審に思っているんだ! 顔を全部出せば安心してくれるはずだ。私は隠れるのを止め、女11に全身を披露した。(ババ~ン!)

「や、やあ、こんにち・・・・・」
「!!!!!!!!!!」

女11の恐怖はさらに悪化したように見受けられる。口を大きく開け、半べそ状態となり、身をそらして恐怖している。

「ヒィ、ヒィ、ヒィ・・・・・おじいちゃん・・・・・おばあちゃん・・・・・」

荒い呼吸のまま、言葉にならない悲鳴を上げつつ、女11は逃げて行った。そのスピードがあまりにも遅く、あまりにも可哀そうで、私は後を追うことさえできなかった。

「もう・・・・・駄目なのか・・・・・。」

私はその場に立ち尽くし、逃げて行った女11の方向を見つめながら、涙を流し続けた・・・・・。リセットされているはずなのに・・・・・どうしてこうなるんだろうか・・・・・。

◆ムスイ12歳、3年間森を開拓する

野宿をしながら、次の日も、その次の日も遠くから女11の家を見守った。一週間たっても妻は家から出てこなかった。さすがに、認めざるを得ない。

「女11と結婚するのはもう無理なのか・・・・・。
・・・・・すまなかった、女11。もう二度と会いに来ないよ。」

そう口ずさんだ私は、その場を後にした。そして、決して振り返ることは無く、地11村から立ち去るのであった・・・・・。

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が、すぐにムスイは戻ってきた。「村の開拓」をするのを忘れていたからだ。この村は貧しい。開拓しておかないと女11が食べ物に困ってしまう。これは必ずやっておかなければいけないことだ。

昼間に行動すると見つかる可能性があるため、私は夜に活動することにした。

「水まき用の推し車」を作った。中に水を入れて、村長の家の前に置いておこう。ひしゃくを入れておけば、畑への水まき用だとわかるだろう。

②森で「家畜」を捕まえた。村はずれに柵を作っておこう。「地11村の方々に提供いたします」と看板立てておこう。家畜を捕まえたらここに入れておこう。

③果物がなっていたら、種を村の近くに植えておこう。そうすれば数年後には実がつくだろう。果物も家畜のところに置いておこう。

③森の中に「池」をつくった。そして、そこにつながる「川」も掘っていった。本当は村の方へもつなげたいが、見つかってしまっては元も子もない。一応、看板で「あっちに池があるよ!」と書いておいた。これでわかるだろう

やるべきことは大体終わった。後は村のみんなが何とかやってくれるだろう。ここまでやるのに3年かかってしまった。ムスイは15歳になっていた。

◆ムスイ15歳、最後の別れ

そうこうしている間も、ムスイは毎日女11の家へと通っていた。そして、窓から女11の寝顔を見守っていた。3年間、毎日!

それもいよいよ今日で終わりだ。

「今日でお別れ、お別れだから!」

ムスイは窓を開けて、部屋の中に侵入。そして、女11の枕元へ。

「ああ、何度見ても可愛い。最高に可愛い。これでもう永遠にお別れだなんて・・・・・グググ・・・・・」

ムスイは涙を流す。

「これが最後、これが最後だから!」

そういうと勢いそのままに、女11をガバッと抱きしめ、ほっぺをスリスリした。

「ああ、もう、もう会えなくなるだなんて、なんて悲しい現実なんだ!!」

涙を流しながらほっぺスリスリを続けるムスイだったが・・・・・

「ぅ・・・・・う~ん・・・・・・・・・・・。」

ヤ、ヤバイ、起きそうだ。ムスイは慌ててその場から逃げ出した。

「・・・・・ハッ!!!」

女11はとてつもない悪夢にうなされていたかのようにベットから飛び起きた。今部屋の中に誰かがいたような? とてつもない恐怖心から汗が止まらない。周囲を見渡す。誰もいない。

女11は安心して一息つくのだったが・・・・・・・

窓「ヒュ~・・・・・」(←窓が全開でカーテンが風でなびいている)

女11は凍り付く。確かに閉めたはずだ。そもそもここ数日は開けていない。自然にあくはずがない。開いたことなど一度もない。なぜ全開になっているのか・・・・・。誰かが・・・・・いた・・・・・???

「ん・・・・・んん~~~~・・・・・!!!???」

女11は恐怖を通り越して、泣けばいいのか、笑えばいいのかわからない表情となった。そして・・・・・・・

「ギャーーーーー!!!!!」

遠くを走って逃げるムスイの元まで聞こえる断末魔が村中に鳴り響いた。

「ごめん! ごめん! 本当にごめん! もう二度とこの村には来ないから!!」

ムスイはそう熱く誓い、村から出て行った。

だが、たぶんすぐに戻ってくるだろう!!!

◆これからどうしよう?

生きる理由を失ったムスイは途方に暮れた。最後の再度まで「女11と仲良くなれるのでは」という希望を持ち続けてきたが、その線はもうない。新しい未来を考えなければいけない段階だ。

「はぁ・・・・・。」

ムスイは深いため息とともに女11への未来を断ち切って、今後のこと考えた。

おさらいすると、この世界は異世界だ。

・剣と魔法のファンタジーの世界
・魔物がいる、魔族がいる、魔王がいる

「う~ん・・・・・そういえば、街に冒険者ギルドがあると聞いたことがあるな。行く当てもないし、しばらくは冒険者としてノンビリ過ごすか・・・・・。」

ムスイは近くにある街へと向かった。