第16話目次第18話

最近、サクヤの機嫌が悪い。何か怒っているような気がする。私は何か変なことを言っただろうか? 色々と考えるが心当たりはない。

サクヤは、裁縫をしているモコモコに抱きついている。モコモコは不機嫌なサクヤをなだめつつ、裁縫をしている。サクヤが抱き着いてくるのはいつものことだからと、さほど気にはしてはいないようだ。

しかし、私としては、自分の婚約者にサクヤ(男と思ってる)が抱き着くのは好ましくない。

「・・・・・おい、サクヤ、あまりモコモコにベタベタくっつくな」
「・・・・・・・」

ジ~ッとムスイを睨むサクヤ。ぐ・・・・・なんか怖い。

サクヤはモコモコの胸にスリスリスリスリし始めた。

(ぐ・・・・・、コイツ、私でもやらないことを・・・・・)

怒りの表情が顔に出る。

すると、サクヤの動作がピタリと止まった。そして、ムスイを見つめる。

(・・・・・ニタ~ッ)←悪魔の笑み
(う、うぉ・・・・・なんだ、なんなんだその笑みは。怖いなんてものじゃない。今まで恐怖というものを一度も感じたことが無い私だが、なぜだかほんまもんに怖い。)

ムスイはマジでビビりあがっている。

「ねぇねぇモコモコちゃ~ん、一緒にお風呂に入ろ~」
(な、なんだと!?)
「ん? そうね、それじゃぁ一緒に入りましょうか」
(!!!!!! モ、モコモコ、何を言っているんだ!?)

ムスイはメチャクチャ動揺する

「それじゃぁ、サクヤちゃんとお風呂に入ってくるね」

モコモコはいきなりとんでもないことを言い出す。婚約者の私に、男であるサクヤと風呂に入ると言い出したのだ。(注意:サクヤは女です)

「い、いや、ちょ、ま・・・・・・」
「うんうん! 入ろ入ろ! 一緒に入ろ!」

サクヤが私の言葉を遮断する。

そして、モコモコとサクヤ2人はお風呂場に入っていく。

「ま、まて、モコモコ! 待つんだ!」

そう言う私に対し、サクヤはクルっと振り返り、こう言った。

(扉解放大)「ムスイ~」
(中)「覗いちゃ~」
(小)「駄目よ~」
(極)「うっひっひっひっひ・・・・・」
(パタン)←扉が閉まる音

「!?!?!?!?!?!?」

ムスイは混乱している

「ムスイは覗きなんて絶対にしないから大丈夫だよ」
「ほんと~、よかった~、これで安心だね~」

そ、そんな・・・・・バカな・・・・・モコモコが私以外の男(サクヤ)と一緒に風呂に入るだと!? い、今、一体何が起こっているというのだ!?

「うわ~、モコモコさんの肌きれ~」
(!!!!!!!!!!)

「スベスベする~、キモイちいい~」
(!!!!!?????)

「も~サクヤちゃんったら~、それじゃ~洗いっこしましょ」
「うん! しようしよう!」

なんかも~、地獄だった。

扉の向こうでキャッキャと笑いあいながらお風呂に入っている2人。私は扉にしがみつき・・・・・、涙を流し・・・・・、崩れ落ち・・・・・、そして・・・・・、意識を失った・・・・・。

「はぁ!!!!!!!!」

私は飛び起きた。

「ど、どうしたのムスイ? なんか隣の家まで聞こえるような叫び声が聞こえたよ。怖い夢でも見てたの?」

周りを見渡す。外がうっすら明るい。もうすぐ朝なのだろう。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・、サ、サクヤは?」
「サクヤちゃんはシュートくんと冒険者ギルドに行って、帰りは今日の夕方だったよね?」

そ、そうだった・・・・・。サクヤはいないんだった・・・・・。そ、それじゃぁ、あれは夢だったのか・・・・・。

安心したら、なんかも~、泣けてきた。

「うわ~ん、お願いだからお風呂に入らないで~(号泣)」
「ええ~??? う、うん・・・・・? わかった・・・・・?」

モコモコはよくわからないが、ムスイがあまりに必死なので、今日は風呂に入らないことにした。次の日は入った。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

そして、ムスイは少しだけサクヤに優しくなった。

「サクヤ、これ好きだったろ、食べなさい」
「え? う、うん? ありがと?」

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