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■■ 天元に住む魔王と女神
「天元」、そこは世界の中心であり、神の住まう天上の領域。雲よりもはるか上空に存在しているため、人族や魔族ではたどり着くことができない。
そこには「魔王」と「女神」の2人が住んでいる。
魔王は人族が書いたという「本」を読みながら、時折、地上の状況を観察している。女神は魔王から色々な指導を受け、立派な神になるための修行を行っている。
そんなある日・・・・・、この世界に異変が起こった。
「ほお・・・・・」
「どうかされましたか、魔王様」
「珍しい来客者だ。異世界からこの世界にやってきた者が2人いる。お前はまだ若いから知らないだろうが、異世界から転移したり、転生したりしてやってくる者が稀にいるんだ」
「まぁ、それは面白そうですね」
「別に面白いと言うほどのことではない。どれ、私は転移者の方を対応することにしよう。女神は転生者の対応をしてくないか?」
「どのようにすれば良いのですか?」
「これがその転生者の記憶だ」
魔王は女神の額に手をかざし、転生者の記憶を脳に直接送り込んだ。
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・その男はパソコンを使いインターネットで囲碁を打っていた。
・負け続けており、イライラしていた。
・「三段」から二階級降格で「初段」に落ちた。
・怒りが爆発し、パソコン画面をぶん殴った。
・「グギギギギ!」 感電した。
・変顔の変なポーズで死亡した。
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女神はその男の死を確認し、目を開ける。
「このような理由で亡くなられたのですか。お可哀そうに」
「そうだな。だが、このような死に方ではあまりに品が無い」
魔王はその男の死体の方に手をかざした。すると、壊れていたパソコンは綺麗に直った。そして、死体もパソコンの前で綺麗に横たわり、表情も穏やかになった。
「これでコイツはただの心臓麻痺で死んだことになるだろう。こやつの人としての尊厳も守られよう」
「魔王様はお優しいですね」
女神は感心している。
「その男の名は『ムスイ』と言う。いきなりの転生で混乱しているだろうから、事情を説明してやってくれ。そして、この世界でなすべきことは何かを考えるようにと伝えてくれ」
「わかりました」
女神はその場から転移し、ムスイがいる精神体の世界へと向かった。
■■ 自分の死を受け入れられないムスイ
ムスイは周囲を見渡す。霧がかっていて、ここがどこなのかわからない。まったく見たことも無い謎の空間だ。
「こ、ここは? さっきまで自分の部屋でネット囲碁をしていたような気がするんだけど・・・・・」
そこへ女神が現れる。
「初めまして、ムスイさん」
「あ、あなたは?」
「私は女神。悲しくも死んでしまったあなたを新たな世界へと案内するためにここに参りました」
それを聞いて、ムスイは「何言ってんだ、この人?」と思った。
「え? 私が死んだ? 何を言っているんですか? 死んでませんよ?」
「信じられないかもしれませんが、あなたはパソコン画面を殴って感電し、死んで・・・・・」
「いやいやいや、今、私はここで生きているじゃないですか。死んでませんよ。何、意味のわからんことを言ってるんですか。女神さんでしたっけ? 落ち着いてください。冷静になって下さい。
だいたい・・・・・って、あれ? ほっぺをつねっても痛くない!?」
ムスイは「フヌー!フヌー!」と全力でほっぺを引っ張る。しかし、まったく痛くない。どういうことなのだろうかと、ムスイは混乱している。
「そうです。今のあなたは精神体になっているため・・・・・」
「ああ、そうか。夢だ。夢だから痛くないんだわ、きっと。ああ、そうだそうだ、囲碁を打った後に布団に入って寝た記憶がある! 間違いない! これは夢だ!」
ムスイは一人で納得のいく答えにたどりついた。そんなムスイを見て女神様は動揺している。
「ム、ムスイさん、落ち着いてください。とにかく話を・・・・・」
「ええい! 何が話しだ! 何が死んだだ! このペテン師め!」
「ペ、ペテン師!?」
「新手の詐欺を仕掛けているつもりだろうが、そうはいかんぞ! その程度の口車に誰が乗るか! そんなことで私の口座からお金を引き出せると思ったら大間違いだ!! とっとと失せろ!! このボ●ナスが~!!」
(シュン!)←ムスイ、強制転生
女神は顔を背け、手をかざし、ムスイを強制的に転生させてしまった。本当は色々と説明したいことがあったのだけれど・・・・・。これ以上、女神は耐えることができなかったのだ。
■■ 魔王、静かに怒る
女神は魔王の元へと戻った。
「ただいま戻りました・・・・・」
女神は短期間でかなりやつれたように見うけられる。
「大変だったようだな」
「はい・・・・・本当に・・・・・」
魔王は女神の額に手をかざす。そして、女神が体験したこと全てを読み取り、理解した。
「なるほど、こういう奴だったか・・・・・」
魔王は、先ほどのムスイの遺体の映像を映し出した。そして、健やかに死んでいるムスイを全裸にした。顔とお腹に変顔のペイントをした。酒瓶を両手に握らせた。壁にもたれかかるように逆さにして、脚全開のチ●コ丸出しポーズにした。それはもう、目を背けるしかないほどに無様な光景であった。
「こうしておけば、変態芸の練習をしている最中、アルコール中毒の心臓麻痺で急死したと判断されることだろう」
「あらあら、まぁまぁ」
女神は特に魔王を責めたりはしなかったという。
魔王は異世界で生まれたばかりのムスイの方へと画面を切り替える。
「ふうむ、コイツが異世界からの転生者ムスイだな・・・・・む?」
魔王はムスイを見て何かに気づいた。