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【モコモコ道】神様の涙 ~前編~

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■神の塔

私はモコモコを背にのせ、神がいる場所へと飛んだ。
背中のモコモコが私に聞いて来る。

「ムスイさん、いや、その・・・・・ムスイ、
神様ってムスイの娘さんなんですよね?」
「ああ、そうだね」
「私がついていったら邪魔ではありませんか?」
「いや、むしろモコモコと一緒にいきたいんだよ」
「そうなんですか・・・・・」

私には理由がわからなかった。

「モコモコは神様と会ったことがあるんだよね?」
「はい」
「どんな印象だった?」
「印象、ですか・・・・・。
綺麗で立派な人だと思いました」
「他には? 例えば、抱きしめたくなった、とか?」
「え? 神様を抱きしめるだなんて。
緊張していましたし、特にこれといったことは」
「そうか・・・・・」
「でも・・・・・」
「でも?」
「ムスイさんとあった時は、とても懐かしいような感覚がしました」
「・・・・・そうか」

ムスイさんはそのまま黙ってしまった。

それからしばらく飛んだ後「神の塔」が見えてきた。

■神の名はミライ

神の塔に到着した。

「ここが神の塔か」
「はい。ここで剣と弓をもらったんです」

ここは世界の中心である「天元」の真下にある塔。
ここは何もない海だったはずだが、
島を作って、塔を立てたのだろう。
どうして、ミライは天元ではなくここを住処に選んだのだろうか。

塔の中から一人の女性が現れた。ミライだった。

「魔王さん、お久しぶりです」
「ああ、面影がある。やっぱりミライだな。大きくなったな」
「3000年も立っているのですからね」

そういってミライは笑った。

「モコモコさん、申し訳ありませんが、魔王さんとゆっくり話がしたいんです。
二人だけにしていただけますか?」
「はい、わかりました」
「ありがとうございます。
1階のスペースは自由に使ってください。
飲み物と食べ物を用意していますので」
「はい」

モコモコさん、か。とてもよそよそしい態度だ。
これではモコモコも何も感じるものは無いだろう。
ミライは気づいていないのだろうか?

「では、魔王さん、行きましょう」
「ああ」

私はミライのの後ろについていき
神の塔を登っていった。

■ムスイの娘「ミライ」が神様だった

ミライは神の塔の最上階に私を案内した。
ここがミライの自室か。
ミライは奥の部屋に入っていった。
なんだか気まずい。私は黙って椅子に座った。

ミライがお茶を用意して私に出した。

「どうぞ」
「ああ、ありがとう」

ズズ・・・・・黙って飲む。
うつむいていたミライが話し始めた。

「何から話せば良いか・・・・・」
「考えてみれば、お前と会話らしい会話をしたことはなかったな」
「そんなことはありません!」

ミライは少し怒った口調で言った。

「お父さんはお母さんの看病以外はいつも私と一緒にいてくれました。
畑の作物のこと、果物のこと、家畜のこと
魔物に遭遇したらどうすればいいか、
そして・・・・・お母さんを大事にしなさいと私にたくさん話してくれました」
「そうか。そうだったな・・・・・」
「私にとって、あの時が一番幸せな時だったんです」
「・・・・・」

ミライはとても悲しそうな表情をしている。

「まずはアンス村のみんながどうなったか教えてくれないか」
「お母さんが亡くなって、お父さんが村を出て行ってしまい
村はとても寂しくなりました。
みんなお年寄りでしたし、10年で亡くなってしまいましたよ」
「そうか・・・・・村のみんなには悲しい思いをさせてしまった」

「残されたお父さんの両親と妹さんの3人は街に引っ越したんです。
こうして、アンス村は無人の廃墟となりました。
二人は街で平凡ながら幸せな生涯をおくりましたよ。
でも、最後までお父さんのことを心配していました」
「・・・・・」
「妹さんは冒険者になりました。
旅をしながらお父さんを探していたようです。
同じ冒険者と結婚し、街で幸せな生涯を終えました」

「シュートとサクヤは?」
「シュートさんとサクヤさんは
南にある故郷に戻って、激戦地でずっと戦っていました」
「ああ、確かそう言う話しだったな」
「南の故郷を守る兵隊長であり
魔族との激戦地であったため、こちらには戻ってこれなかったようです。
心配すると思って、お父さんとお母さんのことは伝えていません。
私がお父さんお母さんのふりをして手紙を続けたんです
おかしいと気づいていたと思います。
でも、一度も追及したりはしませんでした。
二人は南の地域を守るために生き、生涯を終えました」
「そうか・・・・・2人は自分たちの故郷を守り続けたんだな」

■何故、ミライは神に?

「それで、ミライはどうして神になれたんだ?」
「村の人がみんな死んでしまった後、
私は魔王様と女神様がいる天元の世界に住んでいたんです。
そして、二人から神になるための修行を受けさせてもらいました」
「そのような修行があるのか」
「はい。お父さんには時間をさかのぼる呪いがあったのですよね?」
「ああ、そうだったな」
「実は私もそうなる予定だったようです。
それで、魔王様が熱心に私を修行してくださいました。
そのおかげで私は16で神になることができたんです
以降、歳はとっていません」
「そうか・・・・・たった6年で神になる条件をクリアーするとはな」
「魔王様が優秀過ぎたんですよ」
「ハハハ、すだな。あの人はメチャクチャ凄かったからな」

「それで、魔王様と女神さまは?」
「魔王様と女神さまは、私が神になった後、この世界から離れ
別の世界に行ってしまいました」
「そうか・・・・・」
「あの二人には感謝してもしきれません」

「知ってると思うが、モコモコ、シュート、サクヤの生まれ変わりが私の眼のまえに現れた」
「はい、そうですね。十中八九、魔王様の置き土産でしょう」
「やはりミライもそう思うか」
「はい、このようなことができるのは魔王様しかいません
私もあの3人を目にしたときは驚いて、声が出ませんでした」

そう言って、ミライは窓際に立つ。
外でモコモコが花につつまれながら裁縫をしていた。
私も窓際に立つ。

「元気な時のお母さんはあんな感じだったのですか?」
「ああ、穏やかで、いつも裁縫をしていたよ」

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