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ギルドで「シュート」と「サクヤ」の2人を仲間にしたムスイは、3人パーティーで冒険を行うことになる。

「それで、これからどうするんだ?」

そういうシュートに、ムスイはためらいなく答える。

「アンス村に行こう」
「アンス村? あそこってギルドへ依頼が来るような凶暴な動物はいなかったはずだが?」
「魔物もいないよね? 何のために行くの?」
「あの村には開拓の余地がある。今からそれをしに行くんだ。」
「そんな依頼あったか?」
「金なら私が持っているから大丈夫だ」

そういって、持ち歩いているお金を見せる。かなりの額だ。故郷のメイデン村にいた時、アンス村に行くための資金として働いて貯めたお金だ。肉体労働で、トレーニングにもなったし、ガッツリ稼げた。

「ムスイがお金払うの???」
「よくわからんが、アンス村を開拓したいんだな」
「そういうことだ」
「だが、俺たちは強くなることが目的なんだが・・・・・」
「そうか、ならなおのこと大丈夫だ。私のように強くなれるぞ。」
「そうなのか?」
「ああ、開拓は強くなるための修行にもなる。任せておきなさい。」

自分達よりも強いムスイがそういうのなら、ということで2人は納得した。

よしよし、これでまたアンス村に行けるぞ。一人だとまたモコモコに怖がられてしまう。この2人と一緒なら警戒も薄まるかもしれない。村の開拓だって1年以上はかかる。その期間、モコモコと会話する機会もあるだろう。それだけで私は満足だ。

ムスイはモコモコのそばに行くことができるのでウキウキだ。

「それじゃー、出発しよう!」

ムスイたちはアンス村へと向かった。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

ムスイは森の入り口にイノシシがいることに気づく。イノシシの肉をアンス村への手土産にすれば喜ばれるだろう。

「シュート、お前はギルドでトップクラスの剣士と聞いたが、レベルは幾つなんだ? サクヤのレベルも教えて欲しい」
「俺は剣士レベル59だ」
「魔法使いレベル71」

思ったよりも高いな。

「ムスイはどうなんだ?」
「・・・・・剣士レベル47だったかな」
「なっ、俺より12も低いのかよ!? な、なんで俺負けたんだ・・・・・」

本当は「剣士レベル69」なのだが、受付さんと話をして「47」にしてもらっている。もう少し高めに設定するべきだったか。

「私は村人レベル55だからね。それも影響しているんだろう。」
「村人・・・・・開拓か・・・・・」
「そう、それと田畑を耕すことだな。そういうことを毎日続けていれば、剣士としても必ず強くなれるんだ」

私は適当なことを言った。

「わかった。アンス村に行ったら俺、頑張るよ!」

納得してもらえて何よりだ。

「とりあえず、剣士としてどの程度の実力なのか見せてくれないか? ちょうどあそこにイノシシがいる。あれを倒してくれないか」
「あのイノシシを倒せばいいんだな。」

シュートはイノシシの方へと近づいて行く。

・・・・・ん? 今、サクヤがシュートに魔法を使ったな。体全体が少し光った。あれは・・・・・、もしかして防御魔法か?

イノシシは近づいてくるシュートを睨む。興奮している。攻撃態勢に入った。ドスドス、と地をならすと、イノシシは勢いよくシュートに向かって行った。シュートは剣を抜き、それを迎えうつ。

「ハッ!」(シャキーン!)

シュートの剣がイノシシは切り裂く。その風圧でイノシシは吹き飛び、倒れた。

「なかなかのものだろう?」

シュートは得意げだ。

確かに、優秀な部類だろう。しかし、それは「サクヤの魔法」があってのことだとも言える。シュートの剣技であそこまでの威力は出せない。おそらく防御アップではなく、火力アップの魔法だったのだろう。いや、両方か?

しかし、サクヤは黙って魔法を使ったな。シュートは魔法で強化されていることを知らないのかもしれない。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

「それじゃ~、次はサクヤの魔法を見せてほしいんだが・・・・・、どんな魔法が使えるんだ?」
「え? 火の魔法だけど」
「火の魔法しか使えないってこと?」
「ん?・・・・・魔法って火しか無いんじゃないの?」
「・・・・・え?」
「違うの?」
「・・・・・氷魔法とか、雷魔法とか、大地をバキバキ~って割るとか、そんなのがあると思ったんだけど、無いのかな?」
「魔法は火しか出せないはずだ。ギルドでもそんな話し聞いたことが無い。魔族がそんな魔法を使っているという話しも聞かないし。本当にそんな魔法は存在するのか?」

う~ん・・・・・無いのか。色々な属性の魔法があると思っていたのだけど、どうやら魔法と言ったら「火の魔法」らしい。

「わかった。それじゃ~、あの木に止まっている七面鳥を撃ってくれるか?」
「いいよ」

女魔法使いは手で構えた。

「ハッ!」

そういうと、火の玉が飛んでいき、七面鳥に命中した。

見事ではあるが、シンプルだな。

「メ●!とかメ●ミ!とか呪文を言わなくても魔法って使えるものなのか?」
「よくわかんないけど、言う必要ないんじゃない?」

言う必要は無かった。

「もともと魔法使いは珍しいからな。あのギルドにだって魔法使いはサクヤしかいない。だから情報が少ないんだ。でも、魔族も黙って魔法を使うようだから、そんなものだと思うぞ。」
「なるほど・・・・・、勉強になる。」

というか、普通の人はサクヤが魔法を放っているように見えるだろうが、私には「魔法で弓」を作って、矢を射るように火の玉を飛ばしているように見えた。実質「魔法の矢」だった。おそらく魔法とはこういうものなのだろう。

能力的には「弓と同程度の命中率」で「弓よりも火力が高い」といったところか。つまり、「魔法使いは弓使いよりも優秀である」と言えそうだ。

「火力アップ」と「防御アップ」もあるようだし、悪くない戦力だと思った。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

「なぁ、ところでずっと気になっていたんだが・・・・・」
「ん、なんだ?」
「ムスイって俺より剣が強いのに、弓使いなんだろ? どうして剣ではなく弓なんだ?」
「まぁ、弓の方が得意だからな」

そう、私は基本的に剣はあまり使わない。狩りの時は弓を使うし、家畜を捕まえる時は罠を使う。剣を使う機会が無いからだ。

「剣が強いのに・・・・・弓を使っているのか?」
「剣も練習したが、弓を使う機会の方が多かったってことだな」

男剣士は少なからずショックを受ける。

(お、俺は専門職でもないやつに剣で負けたのかよ・・・・・)

「だ、だけどそれだけ強いんだからさ、ムスイも剣士として戦えばいいんじゃないか? そんなに強いのにもったいないじゃないか。」
「私がメインとなる武器を剣ではなく弓にしているのは、大きな理由があるんだよ」
「その理由は?」
「ま~、一言でいうなら、前衛は危険で怖い。」

ムスイは躊躇なく、正直な気持ちを語った。

「き、危険で怖いのか・・・・・」
「そう、危険で怖い」
「危険で怖い!」
「・・・・・・・・・・」

サクヤは面白そうだったので意味なく真似した。

「私は安全が大好きだ。危険なことは任せる。頑張ってくれ。」
「頑張ってくれ!」
「・・・・・わ、わかった。」

シュートはなんだか納得がいかなかったが、とにかく前衛を任されてしまった。

そして3人は獲得したイノシシと七面鳥を担ぎ、アンス村へと歩いて行った。

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あとがき 25/01/05

皆さんこんにちは、原作者のムスイです。

本当は「サクヤは眼が見えてない」という設定だったのですが、無くしました。というのも「後々神聖魔法で目が見えるようになる」という設定を用意していたのですが、「神聖魔法」という設定自体を無くしたので、このままではサクヤは永遠に眼が見えないということになってしまいます。そうなると、後々のストーリーに色々と矛盾が生じてしまいます。ですから、「サクヤは眼が見えない」という設定を無くしました。

しかし、そうなると前話で「股間やら胸やらを触りまくる理由」が無くなってしまうんですよね~。ま~仕方が無いので、サクヤには「年頃の娘だったから」という汚名を背負ってもらうことにしました。本当に申し訳ない。