「なぁ、ムスイ、聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「ん? 何だ?」
魔物対策の防壁を作っている時に、シュートが何か言いだした。
「ずっと気になってたんだが・・・・・どうしてモコモコさんに婚約を申し込んだんだ?」
ムスイは「何言ってんだコイツ」という表情をする。
「・・・・・どうしてって、愛してるからにきまってるだろ」
「もちろんそうだけど、結婚する年齢は早くて18歳だ。18歳になってからプロポーズして結婚するのが当たり前だと思っていたから。ムスイがモコモコさんに婚約を申し込んだと聞いたとき驚いてしまって。ずっと不思議に思っていたんだ。」
「ま~・・・・・、結婚年齢でプロポーズするってのが普通なのかもしれないな」
「それじゃぁどうして?」
今日はやけにグイグイくるなぁ・・・・・
「ん~・・・・・、何と言えばいいかな~・・・・・・・」
ムスイは少し考える。このようなことを聞かれると思ったことがなかったからだ。
「ん~・・・・・、私とモコモコはいい関係になってたし、2年後の18歳でも好き合っていると思う。そして、結婚すると思う。だから、わざわざ婚約する必要はない、という理屈はわからなくもない。・・・・・だが、それは男目線の考えだと思えるんだ。」
「男目線??? 女目線なら違うというのか???」
ムスイの想定外の主張に、シュートは困惑した。
「例えば、私とモコモコが20歳から付き合い始めたとしよう。付き合ってはいるが、結婚しないまま月日は流れ25歳になったとしよう。そして、別れることになったとしよう。そうなると、私はモコモコの大事な5年間を汚したことになるんだよ。わかるか?」
「確かに・・・・・そうなるかもしれないな・・・・・」
「だが、もし20歳の時点で婚約していたとしたら話は変わってくる。25歳で別れるとなると私にも責任が生じてくる。」
「責任・・・・・」
シュートは考えもしなかった話しであったため頭の整理がつかない。
「婚約であれば、モコモコは将来に関して安心して過ごすことができる。私はモコモコに対しての責任を背負わなければいけない。モコモコにとってメリットが大きい。だから婚約を選んだんだ。」
「ムスイにとってはどうなんだ?」
「私にとってはモコモコと共に過ごせるということがメリットだ。ま~、そもそも私のメリットデメリットなんてものは重要ではない。大事なのはモコモコの方だ。”交際”などという女にとってメリットの無い中途半端な状況をつくるのは外道がやることではないのか? 女のことを思うなら”婚約”すべきだと私は考えた。ま~、そういうことだな。」
「・・・・・・・・・・」
シュートは黙っている。色々と思うところがあるらしい。
「・・・・・ありがとう、ムスイ。まだ俺には頭の整理がつかない。もう少しよく考えてみるよ」
「そうか、よくわからんが、頑張れ」
シュートは座り込み、空を眺めていた。
私は普通に「働けよ」と思ったが、何も言わずに一人で作業した。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
次の日の昼過ぎ、ムスイが部屋で囲碁の棋譜並べをしているところ、シュートがやってきた。
「ムスイ、俺、今から婚約を申し込みに行こうと思うんだ!」
「・・・・・え? 誰に?」
「もちろん、サクヤにだ!」
「ほ、本気か?」(←サクヤを男だと思ってる)
「本気だ!」
本気だった。
ま、まぁアレだ。同姓を好きになるというのもありなんじゃないかな。知らんけど。サクヤは一体どういう反応をするんだろうな。知らんけど。
「ガンバレ!」
「ありがとう! 行ってくる!」
知らんけど、私は応援した。シュートは行ってしまった。
最近のシュートの成長は目覚ましいなと思ってはいたが、あいつはいつも私の予想の遥か斜め上を超えてゆくな。
とりあえず、今日は休む日だと決めているので、私は無心に戻って、棋譜並べを続けることにした。
【30分後】
ガックリした男剣士がムスイの元に戻ってくる。
「・・・・・家族って言われた。」
ムスイは腕を組み、天を仰ぎながら、涙を流した。
「・・・・・いつかきっと伝わる日がくるだろうよ」
そういってシュートの肩をポンポンと叩いてあげた。だが、私もいきなり同性から婚約を申し込まれたら余裕で断るけどな。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
晩御飯の時、サクヤはモコモコに抱き着いてグスングスンと泣いていた。サクヤを抱きしめ、ヨシヨシとなでるモコモコ。
泣いている事情が分かっているだけに「私のモコモコに抱き着くな」とは言い難い。シュートもまだ帰ってきていない。今日はどこかで野宿してくるかもしれないな~。
「だってだって私・・・・・、身長ないし、胸もないし・・・・・(グスン)」
もっともな話だが、それ以前に性別の問題があるだろうと言いたかったが、私は言わなかった。
「シュートくんも正直に話せばわかってくれると思うよ」
「でもずっと騙してきたから・・・・・」
「そんなこと気にするシュートくんじゃないよ」
・・・・・なんだか幼児をあやすお母さんだな。私はいたたまれないので、外へ出た。
● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇
シュートは村はずれの丘で寝転がり星を見ていた。
「お~い、シュート」
「・・・・・ムスイか」
私はシュートの隣に座る。
「サクヤが泣いてたぞ。本当はOKだけど、断ったんだと」
「・・・・・そうだろうな」
「わかってたのか?」
「ああ、サクヤは身長と胸のことをずっと俺に内緒にしてきたからな。そのことだろ?」
どうやら気づいていたらしい。
「いつから知ってたんだ?」
「だいぶ前からさ。あいつは起きている時は隙がないが、寝ている時はヒドイからな」
なんだかわかるような気がする。
「俺は気にしないが、サクヤが気にしているなら仕方がない。しばらく待つことにするよ。」
「お前も苦労するな~」
「そういえば、ムスイはサクヤを見る時、胸と脚に眼が行ってるぞ。モコモコさんに誤解されるから注意した方がいい」
思いがけない指摘だ。
「そうか、気づかなかったな。気を付ける。だが、モコモコもサクヤのことは知っているからその心配はない」
「そうなのか? サクヤの能力は特殊だから、情報が広がらないか心配しているんだが・・・・・」
「そうだな・・・・・。モコモコが喋る心配はない。私も気を付けるよ。」
「ああ、たのむ」
さてさてと立ち上がる私。
「さほど心配する必要は無いとわかって安心した。私は戻るよ。」
「ああ、サクヤには”シュートは諦めて無かった”とだけ伝えておいてくれ」
「ああ、わかった」
そういって、私は家に戻った。
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