【前回のあらすじ】
異世界に転生してしまったムスイは、異世界で平穏な生活を目指していた。村を豊かにし、結婚をし、幸せな人生を満喫できると信じていた。しかし、急病で18歳という若さで亡くなってしまう。
しかし、何故か時間が遡るかのように赤ん坊に戻ってしまった。無限ループの始まりだ。そんなことよりも、ムスイにとっては妻の女11と会いたい。そう思っていたのだが、ここは以前住んでいた地11村ではない。別の村だ。なぜこんなことになってしまっているのか? ムスイはただただ困惑した。
◆ムスイ0歳1週間、ここは地21村!?
ここが「地11村」ではないことはハッキリしている。今すぐにでも女11と会いたいのに。私は驚きと怒りの心境となり、両親に詰め寄った。
「父さん! 母さん! ここは一体どこなんだ! 地11村はどこにあるんだ!」
生まれて一週間の自分の子供が、もう立ち上がって、しかも普通に話している。両親は困惑した。
「・・・・・ム、ムスイ・・・・・いつから喋れるようになったんだ?」
「も、もう歩けるのね・・・・・・。すごいわ・・・・・。」
両親は平常心を保ちつつギリギリラインで戦っている。
「そんなことはどうでもいいんだよ! ここがどこなのか教えてくれ!」
両親は顔を引きつらせながらも教えてくれた。
ここは地21村だった。そして、地11村はココ。距離にして約300kmも離れている。いや、距離よりも問題なのは、間に魔物が生息する地域があったことだ。地11村にいくのは赤ん坊の私では不可能と判断せざるをえない。私は絶望した。
いや、絶望している暇などない。私の女11への愛は本物だ。例え世界が私と妻を引き裂いたとしても、私は必ずたどり着いて見せる! 妻の元へ! 私はそう熱く心に誓った。
その日から、私はバックランジ、スクワット、腕立て、腹筋を日課とした。そして魔物対策として剣の練習もおこなった。両親は抱き合って震え上がっていたが、だんだん慣れてくれた。素晴らしい両親だ。
15歳になった時、私は旅立った。もちろん「地11村」に行くためだ、両親に話すと「お前なら大丈夫だろう」とあっさり許可してくれた。理解のある両親で良かった。
◆女11との再会
旅から3日、私は地11村にたどりついた。私がいなかったため開拓はされていない昔の風景ではあったが、間違いなくここは「地11村」だ。
女11、女11はどこだ!! 私は村中を探し回った。そして・・・・・いた! 女11だ! 間違いない! やっと! やっと彼女の元にたどり着いた!!!
花畑で花を摘んでいる女11に近寄る私。風で花弁が舞い上がる。この奇跡的な再会を世界のすべてが祝福してくれているかのようだ。
「女11・・・・・会いたかった・・・・・、会いたかったよ!」
私は涙を流していた。
「あ、あの・・・・・、あなたは誰ですか?」
女11は戸惑っていた。そういう女11に、私は涙をぬぐいながら説明する。
「そうだね、今回の生では初対面だからわからないだろうけど、私は前世で君の夫だったんだ。今はまだ15歳だけど、3年後に僕と君は結婚して夫婦になるんだよ。2人の未来はこれからだって時に、ボクは病気になって死んでしまってね。あの時、ボクの手を握って泣きじゃくっていた君の顔をいまでも忘れることはできない。そして新たな生を受けて、やっと、やっと僕たちは再会することができたんだ!」
そう熱弁したが、女11は戸惑っている。目の前にいる男が何を言っているのかまったくわからなかったからだ。ただ一つわかったことは「ヤバイ」ということである。
「あ、あの、私、用がありますので・・・・・」
そういって女11はその場から走り去ろうとした・・・・・が、ムスイは興奮を抑えきれない。彼女を引き留め、腰に腕をやり、女11に優しく語り掛ける。
「何の用があるんだい? 僕に相談してくれ。なんでも力になるよ。」
「ヒ、ヒ~!!!」
彼女は怯えていた。しかし、今のムスイには女11の全てが愛おしい。
「誰か助けて~!!!」
女11はムスイの腕を振りほどくと、断末魔の様な叫び声を上げて逃げ出した。そして、その悲鳴を聞いて、村人たちが集まってくる。
「どうしたんだ、女11!」
「おい、お前は誰だ! どこの村のものだ!」
幼いころから顔なじみだった地11村のみんなが集まってくる。
「いや、違うんです。私は女11に何も危害を与えていません。皆さんも覚えていないと思いますが、私は以前この村で育って、女11と結婚して・・・・・・・」
言うだけ言って、「しまった」と思った。こんなことを言っても通じるはずがない。女11と再会できた嬉しさで頭がどうかしていた。
「こいつはヤバイな」
「とりあえず、牢屋にぶちこんでおこう」
こうして私は無実の罪で牢屋に入れられてしまった。
◆ムスイ、脱獄する
ムスイは牢屋に入れられてしまった。それにしても、貧弱な牢屋だ。使う機会がない平和な村だったからな~。とりあえず私は夜になるのを待った。そして、土の壁を破壊して脱獄した。
女11の元へ向かおうと思ったのだが・・・誰かがコチラにくる。茂みに隠れ様子をうかがうと・・・・・、それはショールを着た女11だった。牢屋の扉の前まで来ると、ソワソワしながら中の様子をうかがっている。どうやら私のことが心配になって様子を見に来てくれたようだ。
「ううう・・・! なんて、なんて優しい奴なんだ、お前は!!」
ガサガサと動く茂み。
「だ、誰?」
ムスイは茂みから出て行った。嬉しくて嬉しくて、涙が止まらない。
「女11・・・僕だよ・・・・・、ありがとう、ありがとう~・・・・・!」
そう言いながら、涙も拭かず、ゾンビのように腕を伸ばしながら女11を求めた。
「ヒ・・・・・ヒ~!!! 助けて~~~!!!」
女11は全速力で走って逃げた。
「まって、まってくれ~!!」
当然、ムスイも全速力で追いかけた。ムスイの方が余裕で速い。ムスイは女11を捕まえると、後ろから抱きしめ、顔にスリスリした。
「うぎゃ~~~!!! 助けて~~~!!!」
ムスイには女11の断末魔は聞こえていない。
「やっと、やっと再会できたね。」
そういって、顔にスリスリし続けた。
女11の断末魔を聞いて村人たちが集まってきた。
「なにやってる! 女11から離れろ!!」
「このストーカー野郎め!!」
え? ストーカー? 私は謎の言いがかりをつけられてしまった。
「うえ~ん、おじいちゃん、おばあちゃん!」
「お~よしよし、怖かったね。もう大丈夫だよ。」
そういっておじいちゃんとおばあちゃんは女11を抱きしめる。
「いや、まってください。誤解です。碁会所なんです。」
「なにが碁会所だ! わけわからんこと言ってないで、立て!」
こうして、ムスイはまた牢屋に入れられた。今度は鉄の鎖につながれた。
◆ムスイ、2度目の死
次の日、さすがにムスイも冷静になった。色々と対応がまずかったと反省せざるをえない。もう少し自然に、もう少しソフトに対応すべきだった。反省すべきことは山ほどあった。
お昼になって、牢屋に女11がやってきた。村長とおじいちゃん、おばあちゃんも一緒だった。が、そんなことはムスイにとってはどうでもよかった。
「お、おおおお~!!!」
私はとにかく喜んだ。しかし、様子がおかしい。女11が泣いている。真剣な面持ちだった。喜んでいる場合ではない。私は息をのんだ。
「お、お願いです・・・・・。もう私に付きまとわないで下さい。」
「・・・・・え? い、いや・・・・・、私は君を愛していて・・・・・その・・・・・なんというか・・・・・・・・」
予想を超えた事態に、私も何を言えばいいのかわからなくなってしまった。
「私に好意を持っていただけるのはとてもうれしいんです。で、でも・・・・・、怖いんです。とても怖いんです! お願いです! もう私に近寄らないで下さい! 抱き着いてこないでください!! お願いします!! お願いします!!」
そういって女11は地面に崩れ落ちた。マジ泣きであった。魂の叫びであった。壮絶な訴えであった。私はこんなにも女11を苦しめてしまっていたのか・・・・・。放心状態となり、返事をすることもできなかった。
その後、私は生ける屍となった。3日間、食事をすることもできなくなり、牢屋の隅で横たわり続けた。女11も心配して、毎日牢屋に駆けつけ何かを言っているようだったが・・・・・、私の耳にはもう何も届いていなかった。
このままここで死ぬんだろうなと思っていたが、ここで死んだら女11が責任を感じてしまう。私は鉄の鎖を引きちぎり、壁を破壊してヨロヨロと夜の森の中へ入っていった。
そして森の奥へいき、誰にも発見されない場所をみつけると、そこで横になった。そして、そこから一度も動くことは無く、2度目の生涯を終えた・・・・・。享年15歳であった。
◆ムスイ、3度目の生
「ムスイ、お父さんだよ~」
「お母さんよ~」
そして、世界はリセットされ、3度目の生がはじまる・・・・・。
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