第12.5話目次第14話

シュートとサクヤがギルドの依頼の仕事を終え帰ってきた。

晩御飯の時に話を聞く。

「ギルドの依頼はどうだった?」
「魔物が増えているって話しだったな。対応できてはいるようだが、結構厳しいみたいだ。ギルドはムスイも来てほしいと言っていたよ」
「魔物が増えているのか・・・・・、この村の対策が必要だな。」
「そうだな、前もって魔物対策を行っておいた方がいい」

村人たちの訓練を考えないといけない。

「シュートが強くなってたよ」
「おお、そうなのか」

こっちは良い報告だった。

「ギルドで確認したら剣士レベル72になってたよ」
「メチャクチャすごいじゃないか。以前は剣士レベル59だったろ? 72なら一年で13も上がったことになるじゃないか」
「ああ、ムスイの稽古と開拓や畑仕事のおかげだな」
「村人レベルが47になってたね」
「ハハ、そっちはどうでもいいんだがな」

順調に強くなっていて何よりだ。

「サクヤはどうなんだ?」
「魔法使いレベル76になってた」
「前回が71だったから5つ上がっているということか」
「ムスイが何も指導してくれないからシュートに抜かれそうだよ」

私のせいにされた。

「実は町に優秀な人がいてね。その先生にお勧めの魔法の本を教えてもらったんだ。この本なんだが、これで勉強してくれ。」

私は本を出した。

「おお~、ありがとう。でも、私、字、読めないよ」

そこからか。

「・・・・・私が字を教えよう」
「うん、お願い」

仕事が増えてしまった。

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ムスイは碁会所に村人を集めて演説を行う。

「今日は大事な話がありまして皆さんに集まってもらいました。この村はとても平和なのですが、世界を見渡せば至る所で人間と魔族の戦いが行われていると聞きました。この村もいつそうなるとも限りません。ですから、今後、魔物対策の訓練を取り入れようと思うんです」

ムスイの思いがけない提案に驚く村人たち。

「今まで魔物が出現したという話しはない。心配し過ぎじゃないのか?」

村長の意見にみんな賛同している。実際、そうなのだろう。

「魔物が多くなっているというのは事実です。俺は5年ほど冒険者をやっていますが、確実に魔物の数が増えています。人間側が押されているのは間違いありません。何らかの準備は必要だと思います。」
「皆さんは時々弓や槍の訓練を行うくらいで大丈夫です。村の防衛ラインなどは私とシュートの2人で対応を検討しますから」
「わかった、わしらにはわからんことばかりだし、ムスイに任せるよ」

こうして、村の軍事化も進めることになった。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

【弓の練習】
この村はほとんどがお年寄りだ。剣で戦っては勝ち目がない。「弓」で遠距離攻撃するのが最善だろう。

【槍の練習】
「剣」を使った近距離の戦いはやはり危険だ。「槍」で近づけさせないように戦った方がいい。しかし、槍を使った戦闘では死者が出る可能性が高い。弓で駄目そうなら逃げることを考えるべきだ。

村のみんなには「弓」と「槍」の訓練を毎日続けてもらうことにした。

私にはもう一つとっておきの策があった。それが「移動式巨大弓矢」だ。全長3mの巨大な弓を車に乗せて移動させるタイプで、ひもを使って思いっきり引っ張りながら狙いを定め射る。射程距離も長く、威力もとんでもないものになるだろう。これがあれば大きな戦力になる。さっそく準備を始めなければ。

色々と考えてみると、この村の男は私を覗けば5人しかいない。みんなじいさんだ。「シュート」と「サクヤ」はいつまでこの村にいるかわからないため戦力として計算できない。「おばあさんたち」も戦力として計算できない。

そうなってくると、どうしても「モコモコ」を戦力として考えなければいけなく案ってくる。苦渋の決断だ。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

村の人たちには軽い指導しか行っていない。いつくるかもわからない魔物対策でそんなに無理をさせるわけにもいかない。

そういった理由から、特別な訓練は「シュート」「サクヤ」「モコモコ」の3人に行っている。

今日は「弓」の練習だ。普段は村の中で「的に当てる練習」をおこなっているが、今回は「動いている鳥」に当てる練習だ。これくらいできないと実戦では使えない。

①木に止まっている鳥を弓を射って狩るという練習。
②飛んでいる鳥に当てる練習

止まっている鳥は簡単だが、飛んでいる方はさすがに難しい。とは言っても、戦闘経験の差か、シュートとサクヤはすぐに当てられるようになった。モコモコはまったく駄目だった。

「うぅ・・・・・(ポロ涙。」
「ヨシヨシ」(←サクヤ)

ま~、そんなものだろう。村娘として生きてきたモコモコが最初からうまくできるはずがない。少しずつ習得すればいい。

しかし、モコモコはみんなの足を引っ張っているような気分になり必死だ。一生懸命走り回って獲物を探す。

「お、おい! モコモコ! そっちは崖!」
「え? あ・・・・・」

モコモコは崖から落下してしまった。

「モコモコさん!」
「あ・・・・・」

突然の出来事であったが、ムスイは即座に対応。

ムスイは崖の出っ張りを使い、下にジャンプ! 落下するモコモコに追いつきキャッチした。

「ム、ムスイ・・・・・」
「大丈夫大丈夫、よっと!」

ムスイを体を回転させ、体を崖の方に近づける。そして、剣を崖の側面に突き刺した。

(ズガガガガガ!!!)

落下の勢いはどんどん弱まり、2人は地面にゆっくりと着地。

「よっと、大丈夫か、モコモコ?」
「・・・・・・う、うん」

モコモコは少し混乱している。

「おい~! ムスイ~! 大丈夫か~?」
「あ~! 大丈夫だ~! このまま村に戻るから、お前たちも戻ってくれ~!」
「わかった~!」

ふ~、本当に危なかった。そういえば、モコモコにはこういったそそっかしいとこがあったな~。さすがに厳しく注意しておかなければ・・・・・と思ったが、モコモコもかなり怖かったのだろう。かなり動揺している。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

お姫様抱っこの状態のモコモコは、息を整えようとしている。心臓のドキドキ音が体全体に伝わってくる。かなり怖かったのだろう。

「大丈夫か、モコモコ?」
「う、うん・・・・・大丈夫・・・・・」

そう言って黙り込んだ。よほど怖かったのだろう。ボーっとしている。

「じゃぁ、村に戻ろう」
「うん・・・・・」

しばらく歩くと村が見えてきた。モコモコの顔にも安心した表情が現れる。

「あ、ムスイ、さっきはありがとう。・・・・・お礼を言ってなかったよね」
「別に大したことじゃないよ。モコモコがピンチだったら助けるのが当たり前だからね」

そう言って私はモコモコの顔にスリスリする。

「も、も~大丈夫だから、歩く」

そういって足をバタつかせるので私はモコモコをおろした。モコモコはなんだか恥ずかしそうだった。私はヨシヨシとモコモコの頭をなでる。

村の入り口でシュートとサクヤが手を振っている。モコモコは2人のところへ走っていった。今日はみんなで焼き鳥だな~、楽しみだな~、と私は考えていた。

● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇 ● 〇

次の日の朝食の後、モコモコが「弓の訓練」をしてほしいと言ってきた。

「なんだか私だけ置いてけぼりのような気がして・・・・・」
「シュートとサクヤは冒険者なんだから比較しなくていいと思うんだけど・・・・・」
「でも・・・・・」

やけに気にしている。周りが優秀過ぎるのも考えものだな。

「モコモコが気にするなら、特別に特訓してみようか」
「うん! お願い!」

私とモコモコは弓の練習場にいく。

「昨日の鳥の動きは頭にあるよね?」
「うん」
「それじゃあ、鳥が左から右に移動しているとイメージして。それを10回」

モコモコは10回イメージした。

「うん、イメージした」
「あそこに的があるよね」
「うん」
「鳥は左から右に飛んでいる。そして、弓を射る瞬間、鳥はあの的の位置にいる。そのイメージで、飛んでいる鳥に当ててみて。」
「・・・・・わかった」

モコモコは飛んでいる鳥をイメージし・・・・・矢を射る。

「外れたね」
「うん・・・・・」
「じゃ~、もう一回」

矢を射る瞬間に鳥が的の位置にいるなら、矢を当てるには的の右2mほどの位置といったところか。モコモコは何度も何度も飛んでいる鳥のイメージを射続けた。がなかなか当たらなかった。私は他の仕事があるのでその場を離れた。

お昼、碁会所に行ったがモコモコがいない。

「ずっと見ないね。」

ま、まさか・・・・・、案の定、モコモコはずっと練習していた。指は擦り切れ、血だらけの包帯を巻いて続けていた。

「モ、モコモコ・・・・・、これ以上はダメだ」

さすがに止めた。

「もう少しでコツがつかめそうなの。お願い」

そういって、眼をウルウルさせてくる。ううむ・・・・・。

とりあえず、手を包帯でグルグル巻きにした。これならもう傷めないだろう。練習場から移動しそうにないので、おにぎりを持ってきて、ここで食べた。

まさかモコモコがここまで頑張るとは思わなかった。

結局、モコモコは夕方ごろまで練習を辞めなかった。そして、そのころには100発100中で当たるまでに上達していた。

私は、モコモコの手が治るまで練習禁止処分にした。

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