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【モコモコ道】幼馴染のモコモコ

第07話目次第09話

■ムスイ、異世界で生まれる

眼を開けると、目の前に2人の人物がいた。

「ムスイ~、お父さんだよ~」
「お母さんよ~」

目の前で幸せそうに笑っている2人の存在が。

(お父さん? お母さん? これは一体どういうことだ~・・・・・)
(それに、体が思うように動かない・・・・・)
(さっき、女神を名乗る人物が変なことを言っていたが・・・・・)

お母さんと名乗る人物が私を抱き上げる。
私を優しく抱きしめ、頬をすり寄せる。
温かいぬくもりを感じる。

(これは・・・・・信じられないが、私は赤ん坊になっている)
(ということは、さっきの女神は本物だったということか?)
(女神は私が「パソコン画面を殴って死んだ」と話していた)
(おそらく、それは事実だ。うっすらとそんな記憶がある)
(つまり・・・・・本当に私は死んだのか?)
(そして、生まれ変わったということなのか!?)
(そんなこと、ありえるのか??)

私はかなりの錯乱状態になった。

(赤ん坊となって弄ばれている)
(この現状から、私が転生して赤ん坊になっているのは間違いなさそうだ)
(そうなると、リアルでの私の死体は自分の部屋にあるということか)
(朝になったら両親に発見されることになるだろう)
(心肺停止状態で救急車に乗せられ病院に運ばれる)
(そこで、死んでいることが確認される、といったところだろうか)
(死んだ私は病院のベッドの上に寝かされている)
(顔に白い布が被せられている)
(そして、ベットの横で母さんが泣いている)
(おそらく、そうなってしまうのだろう・・・・・)
(私は、一体何をやっているのだろうか)
(大人になって、やっと親孝行できるというのに)
(親よりも先に死に、親を泣かせてしまうことになるだなんて)
(なんて情けないことだ。なんと親不孝なことか)

私はそんなことを考えていると悲しくなって、涙があふれてきた。
母さんに申し訳ない、と。
そして、母さんに会いたい、と。

「オギャ~! オギャ~!」
「お~よしよし、泣かなくていいのよ~。いい子いい子」←異世界の母

(・・・・・そういえば、父さんもいるんだったな)
(存在をすっかり忘れていたわ)
(外で働き苦労してお金を稼いでいるというのに)
(肝心な時に忘れ去られてしまうだなんて)
(男とは損な役回りだな~)

そんなことを考えていたら、
なんだかおかしくなって、笑ってしまった。

「バ~プ~、バ~ブ~」
「お、ムスイが笑ったぞ。
お前のあやし方がうまかったんだろうな」←異世界の父
「うふふ」

ま~、悩んでいても仕方がない。
この世界で生きて行くにはどうすればいいのかを考えなければ。

こうして、悩み多き私の異世界人生が始まった。

■父さんと母さん

ウチは「父さん」「母さん」そして「私」の3人家族だ。
父さんは武器職人で、毎日、カンカンと鉄を叩いている。
母さんはそんな父を幸せそうな顔で眺め、家事をやっている。

しかし、母さんはいつも失敗ばかりだ。
かなり不器用で料理もうまく作れない。
赤ん坊時代、私も何度か地面に落とされたことがある。

「私って何をやっても駄目ね・・・・・」
「お前は家事に慣れてないんだから気にするな」

後から知ったが、母さんは貴族出身らしい。
平民の父さんと恋をし、親に反対され、駆け落ちしたとのこと。
父さんもなかなかやるな~。

■【ムスイ5歳】父さんと母さんの過去

動き回れるようになって気付いたが、この村は貧しい。
村の人たちは全部で10人ほどしかいない。
ほとんど年寄りばかりで労働力が少ない。
完全につんでいるじゃないか。

母さんと村の外れを散歩している時、私は聞いてみた。

「母さん、この村は貧乏なの?」
「そうね、裕福な村では無いわ。
でも、ウチはお父さんが武器職人でお金を稼いでくれるから
何も心配することは無いのよ」
「ふ~ん、そうなんだ」

そう、ウチの父さんは武器職人だ。
武器を作って、街に売りに行き、お金を稼いでいる。
なかなか頼りになる父さんだ。

しかも、稼いだお金で道具や食料を購入し
村のみんなに分けあたえている。
なかなか優しいじゃないか。
父さんがいなかったら、この村は終わってたんじゃないのかな~。

「父さんってすごいんだね」
「そうよ。やさしくてとっても頼りになるのよ」

母さんはとても嬉しそうに笑う。

「でも、どうして父さんは村の人に親切にしてるの?
なんだか村の人全員を助けているように見えるし」
「それはね、村の人たちが私たちを助けてくれたからなのよ。
私とお父さんは、遠くの街に住んでいたんだけど
とある事情でそこに住めなくなり、旅に出たの。
住む場所を探していたんだけど、なかなかよそ者を受け入れてくれなくてね。
私たちは色々あって素性を明かせなかったのよ。
だから不振がって、どこの村も私たちを受け入れてくれなかった。
そして、やっとお母さん達を受け入れてくれたのがこの村だった。
訳アリだったお母さんたちに何も聞かず
自由に使っていい土地と家を提供してくれたわ。
お母さんもお父さんも、その時の恩を返したいのよ」
「へ~、そうだったんだ」

この村の人たちはみんないい人なんだな~。

■幼馴染のモコモコ

父さんも頑張っているようだし
私も村の人たちのために何かしてあげないといけないな。

一番気になるのは、畑がひどいことだ。
ちゃんと耕しているようには見えない
肥料も足りていないように思える。
これでは野菜をあまり収穫できないだろう。

そこで、私は野菜の収穫量があがるように皆の畑を管理をするようになった。

「ね~、ムスイ~、何やってるの?」

モコモコが現れた。
村に住む同い年の女の子だ。

「畑仕事だよ」
「何でよその人の畑を耕してるの?」
「ここは年寄りばかりで人手が足りて無いから
ちゃんと耕せてないんだよ。
少しフォローしてあげないと作物がちゃんと育たないからね」
「ふ~ん・・・・・」

そう言って、モコモコは木の陰に入り、裁縫を始めた。
モコモコの本当の名前は「モコ」と言うらしい。
村の後たちはみんな「モコちゃん」と言っている。
でも、私は同い年だし、ちゃん付けもどうかと思ったので
あだ名として「モコモコ」と呼ぶようになった。

「ね~、ムスイ~、何やってるの?」
「剣の修行だよ」
「何で剣の修行するの?」
「見たことないけど、森には魔物がいるらしい。
いざと言う時は戦わないといけないからね」
「ふ~ん・・・・・」

こうやって、私が何かやっているとモコモコがやってくる。
そして、何しているのかと聞いて来る。
その後、近くの木陰で裁縫をし始める。
こんな日々が毎日続く。

モコモコにとっては「同い年の友達」に見えるのかもしれない。
しかし、私はリアル22年、異世界で3年生きている。
実質的には25歳だ。
25歳の男が、3歳の女の子のおもりかよ。
私にとっては不満が生じる状況だ。
さすがにむなしくなってくる。
とは言っても、モコモコをほおっておくわけにはいかない。

「お~い、モコモコ、そろそろ行くぞ~」
「う、うん、待って・・・・・」

モコモコは私の元へと駆け寄ってくる。
そして、ギュッとしばらく抱き着いた後、私の服をつかむ。
そして後ろからついて来る。
おかげで私の服はビロンビロンに伸ばされてしまった。

モコモコはおじいさんとおばあさんと一緒に住んでいる。
両親はいないと聞いた。
もしかしたら寂しいのかもしれないな、と私は思った。

■【ムスイ8歳】修行と開拓

「ありがとう、ムスイ君。
君のおかげで野菜の収穫量がどんどん増えていくよ」
「家畜用の動物も森から連れてきてくれるし、本当に助かる」
「ムスイ君のおかげで生活が楽になったな」
「いえいえ、お役に立てているようで光栄です。
森の方に果物の木も植えていますので、そのうち収穫できると思いますよ」
「そんなことまでしてくれていたのか」
「どんどん村が豊かになっていくようだ」

村の皆さんはとても喜んでくれている。

気がかりなのが「魔族」や「魔物」だ。
どうやらこの世界には「魔族」がいるらしい。
魔族は人族の村や街を攻撃してくることもあるとか。
こんな落ちぶれた村が魔族に襲われてはひとたまりもない。

そして、森には「魔物」がいるらしい。
人間を襲う凶暴な魔物もいるとか。
しかし、森に何度も入っているけど、今までみたことない。
家畜になる動物はちょくちょく見かけるんだけどな~。
本当にいるのだろうかと常々思う。

とは言っても、何かあってからでは遅い。
私は農業の仕事をしつつも
毎日「剣」と「弓」の修行を毎日続けた。

そして、12歳になるころには
私は村長代理として村の仕事のほとんどをこなすようになっていた。

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