第08話目次第10話

アンス村は10人ほどしかいない小さな村だ。しかもほとんどお年寄りばかり。そのため、近隣の村や町からはほとんど忘れ去られているような貧しい村だった。

その代わりに結束が固い。昼食の時に「村の中央広場」にみんなで集まって食事をし、困っていることは無いかなどをみんなで話しつつ、助け合って生きてきた。

ムスイはそれを知っていたため「集会所」を用意した。広い建物の中に集まって食事をすることができる。村の人たちは大いに喜んだ。そして、「昼食」と「夕方ごろ」の2回、村のみんながここに集まるようになった。

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みんなが集会所に集まったところで、ムスイは「囲碁」のお披露目をはじめた。せっかく女神さまが用意してくれたのだから使わない手はない。

「ほ~ほ~このように打つのか」
「面白いゲームだの~」
「簡単なルールだが、なかなかに奥が深い」
「ムスイ、これはお前が考えたのか?」
「はい、囲碁は僕が考案したゲームです」(ドド~ン!)

ムスイは余裕で嘘をついた。

「ふむふむ、一度打ってみようじゃないか」

こうして、おじいさんの間で囲碁が大ブームになった。

おばあさんたちは料理や裁縫などやることが色々あったため見向きもしなかった。

「じいさんたちが何か始めたねぇ」
「ムスイくんが勧めて始めたようだよ」
「め、面目ない・・・・・」
「いや、いいんだよ、ムスイ君のあおかげで皆助かっているんだから」
「そーそー、暮らしも豊かになったしね」
「サクヤちゃんもずっとこの村に住むといいよ」
「若い子が増えるとたすかるからね。シュート君にもそう言っといてよ」
「うん、言っとく」
「あらあら、サクヤちゃん、そこほどけてるよ」

サクヤは女性陣に混じって裁縫の勉強をしている。いままでは冒険者稼業ばかりで、家庭的なことは一切やったことが無い。サクヤは慣れない手つきで、面白い遊びを覚えた子供の用に裁縫を楽しんでいる。

「少しずつ覚えていけばいいよ」
「将来役に立つからね」
「うん!」
「サクヤちゃんは素直で可愛いねぇ」

女性陣はにぎやかだ。

この後、晩御飯の準備を始める。みんなでまとめて作るため、女性陣の負担も大きく軽減された。

なお、ムスイの考案で、ここは集会所ではなく「碁会所」と呼ぶことになった。

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【アンス村の一日】

【朝】
それぞれの家で朝食

野良仕事

【昼】
集会所にみんなで集まって昼食

野良仕事

【夕方】
みんなで集会所に集まって団らん
戦闘の訓練
晩御飯の準備

【夜】
晩御飯
睡眠

こうして一日が終わる。

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この村にいる間、シュートとサクヤは「ムスイの家」に住むことになった。ムスイの家は「碁会所」でもあり、奥は「ムスイの家」となっている。「臨時の部屋」も幾つか用意されており、そこにシュートとサクヤは寝泊まりしている。

【晩御飯】

「なあ、ムスイ」
「なんだ?」
「開拓や野良仕事は確かに良い修行になるが、いつまでも続けていると戦闘の感覚が鈍りそうだ。3日後に、俺とサクヤはギルドに行こうと思うんだが、いいか?」

そうだな。確かに修行らしい修行はやってこなかった。この2人は強くなることが目標だという話しをしていたし、そのように考えるのも無理はない。

「わかった、どれくらいで戻ってくるんだ?」
「内容にもよるが、魔物や猛獣退治なら3~4日は戻ってこないかもしれない」

魔物や猛獣はこのあたりでは見かけないが、そういう依頼もあるんだな。

「剣と弓くらいなら教えられる。戻ってきたら修行をしようか」
「お、そうか! それは楽しみだ!」

一応、私の方がシュートよりも強い。シュートも強い私から学ぶことがあるだろうと思ってパーティーになるのを承諾したのだろう。開拓や畑仕事も手伝ってもらっているし、少しは役に立たないといけないな。

「開拓と野良仕事でシュートもだいぶパワーアップしてる。魔物退治も今まで以上に結果が出せるはずだ」
「ああ、そんな気がする。だから楽しみにしているんだ」

そんな話を聞いて、サクヤは不満顔だ。

「私の魔法の修行は?」

魔法を使ったことが無い私にムチャ振りしてくる。

「私は魔法を使わないからな~」
「魔力あるじゃん」

そう、私には魔力がある。しかも、かなり高い魔力がある用だ。しかし、魔法は使っていないし、使おうとも思わない。便利そうだとは思うが、私には「剣」と「弓」がある。もう何十年も使ってきているため、体になじんでいる。新しいものに挑戦しようという気にならないのだ。

「というか、魔力あるの何で知ってるんだ?」
「なんとなく!」

どういう理屈やねん。

「そうだな・・・・・、3日後に2人が街のギルドに行くなら、私も同行しよう。調べたいこともあるし。その時に魔法についても調べてくるよ」
「頼んだよ、ほんとに!」

なんか知らんが怒られた。ま~いい。めんどくさいが、やることは沢山あるようだな。

第08話目次第10話

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あとがき

(25/01/05)みなさんこんにちは、原作者のムスイです。

現在、アンス村にいる人たちを紹介しておきます。「ムスイ年齢15歳」を基準にした年齢も書いておきます。

・ムスイ(15)
・モコモコ(15)
・モコモコのおじいちゃん(72)
・モコモコのおばあちゃん(72)
・村長(78)
・村長の妻(77)
・ダイゴロウ(89)
・(マツ)数年前に死去
・キクマサムネ(76)
・タケ(75)
・??????(74)
・ウメ(74)
・ムスイの父さん(39)
・ムスイの母さん(39)
・ムスイの妹(9)
・シュート(14)
・サクヤ(14)

ムスイ、モコモコ、シュート、サクヤをのぞけば、現在、村の住人は「9人」ということになります。後々「ムスイの父さん」「ムスイの母さん」も住むようになりますので「11人」ですね。

「??????」キャラはまだ名前を決めていないということです。ほとんどのキャラは登場機会が無いですし、ま~、ゆっくり検討します。お酒ベースの名前にしています。「キクマサムネ」は名前っぽくないかなと思っているので変えるかもしれません。

「ムスイの妹」を登場させるという構想はあるのですが、どうするかはまだ決めていません。ムスイは両親をほとんど無視して生きていますので、両親は2人目を産んだという案ですね。登場させるかどうかはフィフティーフィフティーです。当然ですが、現時点で妹はいません。「4回目の生以降」ということです。

~~~妹登場案~~~
「お兄ちゃんはぜんぜんわかってないよ! お兄ちゃんだったら絶対に世界を征服できるって!」
「おちつけ、妹。私に世界征服させてどうしようというのか」
「お兄ちゃんは志が低すぎるのよ! だいたいこの村おかしい! お金捨て場があるだなんて! お金って捨てるものじゃないでしょ!」
「お金があると邪魔でな~。家の中で過ごせなくなるんじゃよ」
「だからって、お金をゴミのように捨てるだなんて! そして、町に行くときはお金を拾って買い物をするだなんて! そんなメチャクチャな村ここにしかないわよ! みんな、よく聞いて! 私たちは特権階級なのよ! この世界を支配できるの! 囲碁なんかやってる場合じゃないわ! みんな、冷静になって考えてみて!」
「いや、お前が落ち着いてくれ、囲碁を打たせてくれ」

こういうイメージのキャラを考えているのですが、どんどんモンスター化していきそうなので、登場させるかどうか迷っています。あまり村の中で暴れられても困るんですよね~。
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